龍の気配を感じた一日
朝から駅まで行く途中の、甲州街道を渡ろうとしたら大きなトラックが、赤信号ぎりぎりで目の前を通り過ぎた。ジュラルミンのボディに大きな赤い字で丸に龍の文字が書かれてあった。
午前中は、ある布の収集家とその方のお客さんで古い布を手放しいという方のお宅へ伺った布や陶器、ガラスなどを収集していたご主人がお亡くなりになられ、奥様がそれらを整理したいという事で多少の現金を懐に出かけたのでした。キリムなどもあるという話だったのだか、その多くはインドやインドネシアの染織品や刺繍で、中ではインアドネシアのグリンシンと呼ばれる縦緯絣やスンバ島のいわゆるイカットが目立っていた。そのスンバの藍染めの絣に、生き生きとした登り龍のような文様が描かれていた。亡くなったご主人が30年ほど前に購入したものらしい。ここで2度目の龍にであう。
もっとも好きなバルーチ族の絨毯の中に表現された白い龍と思われる文様
午後からは、絨毯研究会(じゅうたん会議)の例会でチベットのアンティーク絨毯を見る会であった。ここには、ほとんど龍だらけというような、写実的な龍の文様のオンパレード、収集されたDさんによると、チベット人は龍が大好きでいわばマスコットのように身近に感じているということ、そういわれてみるとどの龍も恐ろしげというよりは皆、ユーモラスで親しみやすく表現されていた。特に目の部分などは迫力を出すためにスタックノットという複雑な技法で織り上げられているという。このあたりにこの龍文様の不思議な存在感があったのか!まさに絨毯を抜け出し空を飛びそうなリアリティ。また龍と雲の関係も密接なようで、天にもっとも近いところにいるチベットの人たちは雲を龍に見立てることがあるらしい。そういえば雲龍文様はチベット以外でも東アジアの人々には好まれている。
その後の2次会でもなぜか話題が龍の話に、欧米では忌み嫌われる龍が、東アジアでは好まれるのか?東方の龍と西方のドラゴンの違いは何だろうか?などなど・・・話は盛り上がりました。西アジアでもコーカサス地方には通称ドラゴンカーペットやドラゴンスマックと呼ばれる龍モチーフの絨毯や毛織モノが織られている。このあたりが龍を好む?西限だろうか。
また、中国では皇帝の乗り物として、特別の存在龍は手足の爪の数で、その権威が表現されるようで、皇帝のシンボルである5本指は、皇帝のみにしか許されないようである。
中国明時代の皇帝服(龍衣ロンパオ)の胸部分。5本の爪
かなり酔った帰り道で、車にすれ違いはっとしてナンバープレートが目に入り、見てみるとなんと『9999』だった。中国ではこの9という数字がもっとも強くそれは龍を意味するという。
そんな龍の気配の一日でした。
チベット絨毯の龍はいつかご紹介したいです。