タイマニ族の絨毯-2
■これは馬やロバに乗るときにお尻の下に敷く鞍ですが、現地では、ジュル=アスブとかジニ=アスブとか呼ばれています。
■中央部分はフエルトでその周りに刺繍で文様が表現されています。中央部分の濃い焦げ茶と周りのオレンジや茶色、白など色調と組み合わせがタイマニらしい、雰囲気を出しています。
■ところがよく見ると、オレンジ色の刺繍の部分(羊の角のような文様)が2本あるのと一本のとがとても不規則な事がわかります。交互でもなく、3つ飛ばしとかでもなく、本当にいい加減に並んでいます。でも全体で見るとなんともいえない落ち着いたバランスがあるように思えるのです。一番外側にある白い糸の菱形のような形も同様に、微妙な、ばらばら加減が絶妙です。
これは、おそらく意識して刺したのではなく、なんとなく刺繍をしているうちに自然的に出来上がってしまった、というような感じがします。
■自然界にあるものは、木の木目でも、花や蝶でも、貝殻や、キリンやしま馬も模様にいたるまで、同じものは無いように思います。いわば神様が作り出した模様といえるかもしれません。
大げさな例えかもしれませんが、タイマニ族のモチーフは、文様とよぶよりは模様という自然界のモチーフに近いように感じています。
これはキリムでも絨毯でもないスマック織りという技法で織られたタイマニ族の敷物です。
この色彩感覚と文様のバランスは、おそらく何の下絵なしに、その日の気分でアドリブで楽しみながら織られたのではないかと想像します。良く見ると下のほうのモチーフがかなり詰っているように見えます。
■これを見ていると、またはこの上に座っていると、不思議と潤いを感じます。この不ぞろいの菱形達が、さらさらと動き出すような感覚になり、青の色彩と相まって水の流れを感じてしまうのかもしれません。
■まだ詳しくはわかっていませんが、ヒンヅゥークシュ山脈の山岳地帯を、家畜と共にのんびりと遊牧する彼らの感性が生んだ、かけがえのない家族や家畜のための織物なのではないかと思うのです。