ブログトップ

部族の絨毯と布 caffetribe

caffetribe.exblog.jp

部族の絨毯と布

carpet magic(魔法の絨毯)

絨毯数奇が集まる会「じゅうたん会議」のなかでもマニアックな勉強会「読む会」では、英国人絨毯研究家JON・THOMPSON氏の名著「carpet magic」をメンバーが交代で翻訳しながら読み合わせをしている。
■この本では前回紹介したように、絨毯の分類を従来の、地域や歴史、あるいは文様によ分類するのではなく、絨毯の織られる生活環境で分類するというユニークなものである。なかでも19世紀に部族共同体(トライバル・コミュニティー)で織られたものの素晴らしさに着目し、それらがどのような生活環境の中で織り続けてこられたのかに多くのページを割いている。

今回はそのトライバルラグについての最終章、まさに佳境といえる部分について行われた。
a0051903_17104189.jpg

■最終章は「The decline of tribal weaving」という斜陽の部族じゅうたんというタイトルで19世紀に大衆の熱狂?と共に西欧に受け入れられた部族の絨毯やキリムが、西洋文化と接する事で(欧米・ロシアなどの列強国の経済重視主義および工業化、新しい農業経営法=共産化)などの様々ないわゆる西洋化は田舎の共同体にまで侵食し、伝統的な部族固有の文化や生活環境を蝕んでいった。
ついには部族の伝統的なコミュニティーが消えつつあるという内容である。〈最近では情報化がかなり偏狭な地域のにも入り込み、絨毯やキリムの価格が急騰したり売れるデザインを織るようになりつつあるが・・・。〉

■その具体的例として、1860年頃から始まった合成染料の急速な普及をあげている。
初期のアニリン系化学染料は、とくに退色が激しく絨毯の織り手達にとっては、「災難」であったと述べられている。

絨毯やキリムは色だ!と言われるほどその色彩と配色そして染料はとても重要な意味を持っていると思う。(天然染料と合成染料についてはいずれまとめたく思っています。)

■また単に化学染料が絨毯に使用されることでおきた、表面的な絨毯そのものの変化だけでなく、安価に入手できるようなった化学染料の派手派手な色糸が、部族の人々の伝統的色彩感覚までも変化させてしまったという事に言及している。
a0051903_17171212.jpg

トルコのユリュックの女性達がギラギラの蛍光色で平織りを織っている。

■作者のトンプソン氏は1900年以降に合成染料を使用した部族系の毛織物には色の配色や色そのものにそれまでに無かったバランスに欠けるものが表れるようになってきたとしている。
また部族の女性達は元々明るくはっきりした色を好む傾向があり、特に子供たち、教育を受けていない人達、先入観の無い人達は共通して鈍く冴えない色よりは明るく鮮やかな色を好むとしている。(この部分には多少疑問が残る。バルーチ族などは昔からシックな色使いを好んできた故・・・。)

そして何よりの部族絨毯の特徴として、織り手がどのようにして織るのか(織り手の気持ち)が絨毯にとって何よりも重要だというであり20世紀の絨毯の大きな変化がこの部分と密接に関わっているということである。
a0051903_17382720.jpg
おそらくトルクメンの幼児が見よう見真似でままごとのように絨毯を織っている場面。
◎素晴らしい写真が多いこの本のなかでも、この写真が一番好きだ。

次は文明のグローバル化や戦争がどのように部族の共同体の織り手気持ち=絨毯変化を与えていったのかに続きます。

写真はすべて「carpet magic」から
[PR]
by caffetribe | 2006-08-31 17:47 | 部族の絨毯について。