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部族の絨毯と布 caffetribe

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部族の絨毯と布

草木染(天然染料)の復興

 イランの大規模な絨毯展示会で大掛かりな天然染料のデモンストレーションが行われたり、草木染をブランドイメージとして売り出す工房などここ数年は草木染(天然染料)の復興が大げさに言えば運動のようにして興っている。

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その理由のひとつは、欧米などの絨毯研究者が化学染料一辺倒になってしまった手織り絨毯市場にたいして、多くの研究書や学会などでその現状を憂い、天然染料への回帰を訴えたとたということがあげられるだろう。
       
ただし、皮肉なことにその化学染料を発見したのはイギリス人でその後この染料を売り出すために、多くの企業がトルコ~イランなどの手織り絨毯産業に目をつけ大々的な営業活動を行った事にあるのだが・・・。

 そしてもうひとつは草木染の絨毯のほうが『売れる。』という空気になって行ったからではないだろうか?

これには幾つかの大きなプロジェクトが関係しているようだ。その立役者がドイツ人化学者で絨毯研究家のHarald Böhmer氏であり絨毯やキリムの染料に関して語る際に、彼の存在を忘れられない。
        
まさに『Life Is Color』とはこの人のことである。

若い頃から化学者として最先端であったドイツの染料研究の知識と実験というキャリアを持って、アナトリアの遊牧民のフィールドワークを積み重ねそれまで記録されていなかった部族の鉱物、虫などから染料として使われるモノとその方法に関する膨大な情報を集めそれを分析し本にまとめた。

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この『KOEKBOYA』というのはトルコ語で天然染料を意味するようだ。
この本には、トルコの遊牧民の染料や染色方法を中心に世界各地に広がる先住民や土着文化のに伝わる染料とその方法が網羅されている。
 
 尊敬するBöhmer先生に昨年のICOCイスタンブールでお会いすることが
出来たのだが、フィールドワークの積み重ねで日焼けした風貌は知らない人がみたら何処から見てもドイツ人には見えない、遊牧民であった。

幸運なことにBöhmer先生ご本人からこの本を譲っていただいた。
(もちろん直筆のサイン入り)ほとんど追っかけ状態・・・。
おまけに70トルコリラという値段と仰せられたのだが、お渡しした100リラ札の御つりがなくなんと50リラ札を下さった。ラッキー!

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内容についてはいずれゆっくりご紹介したいのだが、これは世界的にも最も贅沢で稀少な染料と言われている、貝紫である。

この貝の中の卵巣(もとはクリーム色)の一部が空気に触れると紫色に変化するたいへんに珍しい染料である。

 トルコ~インドが中心であるがインドネシアや中国奥地など世界中の天然染料が化学式と共に掲載されている。
      
Böhmer師は同時にイスタンブールのマルマラ大学で教鞭をとり、次世代の研究者や草木染の後継者をたくさん世に排出している。
また世界的に草木染絨毯の復興を訴えるきっかけとなった『DOBAG』 Dogal Boya Arastirma Gelistirme
天然染料の調査と開発のためのプロジェクトを立ち上げ草木染絨毯の素晴らしさを世に広めたのである。

まあこの『DOBAG』プロジェクトには賛否両論あるのだが、これによって皮肉にもドイツ製の高性能なクロム染料の浸透に少しだけブレーキがかかったといえるかも知れない。

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奇しくも、TOPHANE宮殿で展示されていたアンティークの素晴らしい草木染の絨毯の前でHarald Böhmer氏に再会したのだが、天然染料だけでは考えられない、この目の覚めるような色を出した昔の人々の手仕事に思いを馳せる感慨深い体験であった。
      
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by caffetribe | 2008-02-29 18:47 | Life is color