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部族の絨毯と布 caffetribe

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部族の絨毯と布

天然染料と化学染料

天然染料だからといってよいとか化学染料はよくないというものではないが、やはり過去の素晴らしい植物や虫などによる染色技術をみると圧倒される。
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 ケルメス樫という樫の木に作られた小さな虫の巣から取る赤い色。小枝のあいだに雌が赤紫のビーズのような玉を作る。これを酸に溶かしてから乾燥さて染料とする。
このケルメス樫はユーラシアが原産でフランス・スペイン・イタリアなどに分布。

ペルシア語で虫をケルメスというのですが、まさにケルメス=虫。
赤という意味のギャルムと頭の綴りが違うが音が似ている。

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これは17世紀のイスファハンで織られたといわれる絨毯である。
化学染料が最初に出来たのが、1859年のイギリスということなのでこれはまさしく天然の染料だけで染められたことになる。
ケルメスが使われているかもしれない。
ちなみに、最初の合成染料はマラリアなどの特効薬を開発中に偶然に廃液が赤くなるのを、ヒントに出来たといわれいて、この染料はその後急速に広まるが、退色が激しく暫くして消えていく。
               
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これも18世紀のアナトリアキリムであるが化学染料のない時代に織られたものである。

 両方に使われている、赤とピンクの色が素晴らしい。
このピンク色は一見化学染料のように見える。 私たちは先入観として、ケバケバしい色は化学的な印象をうけてしまうようだ。実際にイギリスで有名なオークションのsazabysでこのピンク系の色を化学染料と判断し、本来であれば高額で評価されるものを、外して損をしたという話を
聞いたことがある。色の判断は本当に難しい。

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例えばこの染めは、茜のなかに様々な植物が入っていた。
ひとつは胡桃の果肉。これに含まれるタンニンがより深い色を 出すようだ。ほかにも柑橘類の皮を入れたり、遊牧民の様々な経験と継承が込められている。
                
だから簡単に天然の染料を同定するのは容易でない。
本格的に染料の鑑定を行うには、遠心分離機のような専門の装置が必要で、そのためには1回につき5万円ほどの費用がかかってしまうようだ。
であるから実際には長年の経験からくる『勘』が頼りという事になってしまう。
              
 西アジアで赤の染料といえば、茜という植物の根が一般的。
 しかし茜には微妙に黄色い成分ば含まれていて純粋なピンクや紫を出すのには適していないようだ。日本茜などを見ても夕焼けの空のような穏やかなオレンジ色が多い。

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このマーシュアラブの刺繍布は圧倒的にオレンジ系が多い
そしてかなり華やかな色を組合わせている。染料はといえば化学染料のように思える。しかし化学でも天然でも関係ないような
面白さが有る。色とはいったいなんであろう。
               
学校ではマンセルの色見本などで色相や色彩や補色関係などを学んだ記憶があるが、まったくそういう知識のない遊牧民や先住の土着的世界のなかに深い色を感じることが多い。


《参考文献》
Harold Bohmer 著 『KOEKBOYA』
               

          
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by caffetribe | 2008-03-05 20:00 | Life is color