ブログトップ

部族の絨毯と布 caffetribe

caffetribe.exblog.jp

部族の絨毯と布

部族の毛織物の技法について2《Woven Structures》

技法について書こうと考えているうちに時間が経ってしまったが、イスラムアート紀行のoriさんから大変に貴重な資料を貸して頂き、「これを待っていたのでは!」という偶然性に驚いた。

a0051903_21105932.jpg

資料1.アゼルバイジャン人の地機 ジャジムを織るシャーサヴァンと思われる。
【1.部族の毛織物】 <地機>

その資料は奈良の「シルクロード学研究センター」が出している《SILK ROADLOGY》というシリーズのなかの『シルクロード織機研究』VOL.13というものである。
今回の特集では4名の民族・考古学・染織技術・民族織物技術というそうそうたる研究者の手による丹念なフィールドワークに基づく膨大な調査報告書である。
a0051903_21154718.jpg

資料2.イラン:クルド人の地機  テントの外で織る典型的な織り機
【1.部族の毛織物】<地機>


地域的にも最も興味深い、イラン・ウズベキスタン・中国新疆ウイグル地区である。
これだけの専門家による共同研究なので圧倒的な情報の量であり、全体の紹介は難しいのだが、ほんのさわりだけでもかなり面白そうである。
a0051903_21191249.jpg

資料3.イラン:トルクメン人の傾斜式枠機
 【2.家内製手工業的=軒先で織られる】<垂直式枠機>

最近とても織物に興味が有る人と出会い、布=織物とは何ののだろうか?という原点に帰るような思いを強くしていたことも、この本との出合いの喜びを大きくしたのかも知れない。
a0051903_21301756.jpg

資料4.イラン:ペルシア人の垂直式枠機 
 【3.都市の工房の絨毯(産業的)】<垂直式枠機>

前田 亮先生による織物の起源と発達そして伝播という内容のテキストから魅せられた。
『機織は最初の生産機械である。』という言葉に学者としての意気込みが感じられる。

以前に紹介したように、これまでは織りの技法については無知であった。文様ばかりを分類の判断にしてきたが、ある時に、文様ではどうしても分類が出来ない絨毯に出会い、技法をみることでストンと『こうだったのか!』と解ったことがあってから技法の面白さに気がついた。

また男性が織るもの女性が織るものについても地域や織り手の置かれる生活環境の違いなど
Jon Tompson氏の分類とも関係が深いということも解ってきた。
繰り返し紹介しているが、織り手側にたった絨毯の分類である。

1.部族の生活の道具として織られる毛織物やキリム 【写真資料1と2】 主に女性
 <サドルバック・塩袋・キリム・小さい絨毯等など。> 水平式織り機が多い

2.村単位で織られる素朴な絨毯やキリム  【写真資料3】 女性が多いが男性もあるかも
 <主婦を中心に織られる、家内産工芸品。売ることもも多い> 垂直・水平式両方見られる

3.都市の工房で織られる緻密な絨毯やキリム 【写真資料4】 地域によっては男性が多い
  <分業性の販売を目的に織られる。ペルシア絨毯など> ほとんどが垂直式枠機

4.宮廷御用達用の絨毯。
  <シャー=イランやスルタン=トルコの為の豪華な絨毯> 

この資料の中でも、職能として産業用【売る為の絨毯】やキリムは男性の織り手も多いと書かれていて、イランのカシャーン、ヤズド、エスファハーンなどはほとんどが男性と記されている。

このほかにもイラン人系とトルコ人系の機織の相違などについてもかなり詳しく記されている。
                
これからも、少しづつ紹介して行きたい資料である。

a0051903_2144495.jpg

 イランのホラサーン州のアフガニスタンにも程近いサンバシオン村(モンゴル系の部族が10件ほどの集落)で注文された『ギャベ』風の絨毯を織る女性。<水平式枠機>

写真資料の1~4は『シルクロード織機研究』VOL.13からの引用。

《参考文献》
Handlooms of the Silk Road Silk Roadology 13 (シルクロード学研究より)
[PR]
by caffetribe | 2008-04-11 21:11 | 毛織物の技法