解放された中村さんへ。
喉につかえた棘のように心のどこかに引っかかっていた事件だっただけに、本当に嬉しいニュースであった。
バルーチ/バローチ語を習得され、この地域の民族と民俗を愛するW大学のM先生からも、気持ちの篭ったメッセージが届いていた。
このメッセージを読んで、2001年に一緒に辿った、パキスタンのバローチスタンへの旅を、思い起こさずにはいられなかった。
厳しい環境や言葉も通じないなか、半年以上も頑張られた中村さんとご家族の皆さんには、に心から『良かったですね!』と言いたいです。
バルーチ族の古くから伝わる、生活習慣に詳しい、M先生も『もし彼らがバルーチ部族慣習法を守る旧態的なバルーチ族であれば、人質の命は絶対無事であると確信していた。形は違うが「客人」としてしまった人の命と財産は、命をかけて守らなければならないと定めたバルーチ的慣習法マヤール(mayar)/ リワージ(riwaj)がある。』
これについては、会うたびにこの話題になり、彼の無事を信じ、また願いを込めて語りあった。
バルーチと言えば、暗闇に光るようなシックで煌きのある絨毯を織る人々である。
またM先生の専門である芸能についても類まれなる才能を持つ人々でもある。
彼らの伝統が守られ、アジアに興味を持ち困難な地域を知りたいと言う気持ちを持って行動した勇敢な若者が無事に帰ってきたことは、なによりも嬉しいニュースであった。