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部族の絨毯と布 caffetribe

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部族の絨毯と布

部族キリムに表現される「生命の樹」

昨日でエスニカさんのセールが終了いたしました。
会場にお越し頂いた方々や会場となった、エスニカさんには大変にお世話になりました。
心よりお礼申し上げます。

会期中に更新出来なかった「生命の樹」モチーフに関して少しばかり補足したいと思います。
部族じゅうたんやキリムには実に様々な形をした生命樹が登場しますが、同時に違った部族でも共通した「生命の樹」モチーフも表現されています。
部族の間で共通に表現される「生命の樹」モチーフが移動などで伝えられたものなのか、自然発生的なものなのかを考察することで、交流による伝播か、先天的な嗜好なのかという、文様発祥の起源を知る手掛かりとなる可能性を秘めているように思えます。

ここではいくつかの、部族じゅうたんやキリムに良く見られるモチーフを紹介します。

            ≪真っ直ぐに伸びた樹木が左右に枝を広げている「生命の樹」文様≫
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   バルーチ族 シスターン地方(イラン東部) 袋物 表面 ジジム (縫い取り織り) 羊毛
           
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      シャーセバン族 イラン北西部モーガン山周辺 サドルバック ジジム (縫い取り織り)

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      シャーセバン族 イラン北西部モーガン山周辺 サドルバック ジジム (縫い取り織り)

上の三つの「生命の樹」モチーフは共通して袋物の表皮部分全体に表現されている。枝部分の濃密度に多少の違いはあるものの全体的なフォルムは似ているといえるかもしれません。
バルーチ族はシリアなどのアラブ地域からカスピ海沿岸を通過して、現在のホラサーン地方からシスターン地方~アフガン~パキスタン広い地域に生活範囲を広げています。
カスピ海沿岸地域を通過する際に、シャーセバン族との交流があったことは容易に考えられます。

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 バルーチ族 ホラサーン地方(イラン北東部) ソフレ 食卓布 ジジム (縫い取り織り)
このソフレ(食卓布)は最も気に入っていたアンティークキリムの一枚だが、ホラサーン地方のバルーチ族を代表する「生命の樹」文様が見事に表現されています。

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バルーチ族 ホラサーン地方(イラン北東部) ソフレ 食卓布 ジジム (縫い取り織り)
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バルーチ族 ホラサーン地方(イラン北東部) ソフレ 食卓布 ジジム (縫い取り織り)

上の3点は共にイラン東北部の豊穣な地域ホラサーン地方のバルーチ族のものだが、共通した「生命の樹」文様が織り込まれたソフレで、食事の時に広げられる遊牧民にとって貴重なラクダ毛を使ったアンティークキリムです。このホラサーン地方は古くから豊穣の土地として力のある遊牧系部族の集まる土地であり、北部には騎馬民族のトルクメン族、西部にはイラク側のクルディスタンから分離させられたクルド族が、南部には多様な支族を持つバルーチ族が移動生活を続けてきました。
豊かでなだらかな土地であるホラサーンは、西瓜やメロン、葡萄などの果実、紅玉瑞(カーネリアン)、瑪瑙(メノウ)、トルコ石(フィルゼ)などの天然貴石、そして質の高い羊毛の産地として名高く大型の一こぶラクダも多く棲んでいます。
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       クルド族 ホラサーン地方(イラン北東部) ソフレ 食卓布 ジジム (縫い取り織り)
食卓布の細長いソフレは大型のラクダを所持する限定された部族によって織られるが、脂分を含んだラクダの毛は発水性が高く、テント内に敷かれた大型のキリムや絨毯を汚さないためにも欠かせないものです。
このラクダの毛を使用したソフレはホラサーン地方のクルド族やバルーチ族に特に多く、食事の場を和ませるであろう「生命の樹」文様が織り込まれています。

「生命の樹」文様はおそらく、多くの願いや信仰の対象として表現される事もあるのだろうが、乾燥地域においては樹木=水場=オアシスという遊牧系民族の心を癒すシンボル的な意味もあるように思えます。
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by caffetribe | 2009-08-31 17:54 | A Tree of Life 生命の木