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部族の絨毯と布 caffetribe

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部族の絨毯と布

先住民文化に見られる生命の樹

生命の樹を検索でひいてみると、上位に出てくるのは「セフィロトの樹 」ユダヤ教の神秘思想カバラに登場する生命の樹である。
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このシンボル的なモチーフに関してはWikipedia をはじめ多くの情報があるのでここではあえて紹介しないが旧約聖書にも登場する象徴的な文様の代表といえるかもしれない。
言い換えると、一神教的世界観の中でこの「セフィロトの樹 」=生命樹は精神世界の中心をなす無意識的イメージの世界でも重要な意味を持ってきたといえるのだろう。
前回から紹介してきた遊牧民のキリムや部族絨毯に表現された「生命の樹」も西アジアに於ける一神教世界観に自然と溶け込んできたものかもしれない。ところが、イスラム教という絶対的な一神教のなかで、ある意味で信仰の対象ともなりえる「生命の樹」文様はどのような意味を持ちどのように表現されてきたのだろうか?
ここにとてもユニークな一枚の絨毯がある。

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                 イラン イスファハン 樹木文様 コルクウール 

この絨毯に画かれている、柳のような樹木と鶴のような鳥はイスラム美術というよりは中国絵画的、もっといえば、書画骨董の「掛け軸」に出てくるような「絵画」である。日本の絨毯研究の第一人者といわれる杉村棟先生も本来のご専門は「イスラム美術」で特に中国絵画とイスラム美術との関係性がライフワークであると仰っておられた。さらに生命樹=神樹と柱立て、そこに欠かせない鳥と樹木の関連性は実に興味深い世界が広がっている。
2001年に出版され、このあたりについてたいへんに詳しく書かれた本で「神樹」~東アジアの柱立て~
という本がある。
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民俗学者の萩原秀三郎氏著作のカラー写真も豊富な名作であるが、宇宙の中心を巡るというコンテンツのなかに信州の奇祭「諏訪神社の御柱祭り」から中国少数民族の「稲と鳥と太陽」の生命樹信仰(本の表紙)からシベリアに於けるシャーマニズムの中心的役割を担う「柱立て儀礼」を貴重なフィールドワークと共に紹介している。

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諏訪神社の御柱祭り
「御柱祭り公式サイトより引用」








もちろん東アジアに限らず、東南アジア、インドネシア、インド、ネパールなどにも非常に共通した祭りや儀礼信仰の対象となる表現は驚くほど多くまた類似している。
インドネシアスマトラ島に伝わる儀礼布タンパンクロス「霊船布」にも生命樹と鳥や龍の複合した表現が多く見られる。この地域の人々にとって船と生命樹そして龍に乗る祖霊は彼らの先祖そのものとして、神話世界に登場する最も重要なイメージでもある。(先祖は船に乗って海のかなたからやってきたと伝えられている。)

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                インドネシア スマトラ島  霊船文様布  タンパンクロス

こうした鳥や龍と共に表現される生命樹はアジアにのみならず、汎太平洋に広がる先住民文化にも共通して見られるようだ。例えば、北米地域の先住民文化としてよく知られるトーテムポールやアーストラリア先住民のスターポール、北欧先住民ケルト文化のメイポールなど数え上げればきりがない・・・。

こうしたトーテミズム的(アニミズム的)シンボルを持つ生命樹文化は、イスラム教が広まった地域のなかでも、遊牧的な生活を続けて生きた人々のなかに、時として表現される場合があるようだ。
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                      バルーチ族 祈祷用絨毯の部分

このなんともユニークなモチーフはバルーチ族の祈祷用絨毯のなかに表現された文様である。
鶏冠を持つ鶏のようなモチーフはバルーチ族にとって重要なトーテムを意味するモチーフのようだが、この中では生命樹と混合されてなんとも不思議な形として表現されている。
西アジアに暮らす遊牧民にとっても生命樹+鳥などはイスラム教以前のアミニズムやトーテミズムあるいはシャーマニズムなどのいわゆる原始的信仰といわれるものの名残なのか・・・?
イラン西部のザクロス山脈地域のルリスターンにも鳥と柱に関連するような奇妙なブロンズが出土している。

象徴的文様の持つ意味を探る上でも興味深い世界である・・・。
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by caffetribe | 2009-09-08 01:07 | A Tree of Life 生命の木