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部族の絨毯と布 caffetribe

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部族の絨毯と布

カテゴリ:毛織物の技法( 7 )

シャーサバン族に代表されるスマック織りについての、考察が途中になってしまったが、『織の構造』=woven structuresから見えてくる事に注目したい。

『旅と絨毯とアフガニスタン』のブログで継続的に紹介されている、Peter 氏の『アムダリア川沿いのトルクメン絨毯』のなかでも言及されていたが、織の構造から部族の違いを同定する事が必要になる場合がある、とうテキストがとても興味深かった。

なぜなら、現地で購入した絨毯やキリム、塩入れなどの袋物が何処のどんな人たちによって織られたものかということがとても知りたくなる。そんな場合現地のディーラーに聞いてもわからない場合が多く、欧米で出てる専門書を首っ引きで、似たような色彩やモチーフを探すのだがそれでもわからない場合がある。
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ルル?バックの表皮 表面(交互スマック) 周り縁(パイル)実はこの袋物の表皮も何処の部族かを特定できずにいた。中央の四角と芋虫のようなへんてこな形のモチーフをあまり見たことがなかったからである。
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これは先ほどのバックフェイスのアップである。今はおそらくルル系のバフティヤリー族のものと思っているが、その決め手となった根拠のひとつは、袋物の底の部分にパイル構造(絨毯)が使われていることと、袋の表皮(表面)に交互スマック(Reverse soumack)という技法が使われていることだ。
もちろん表面の文様の意味を確かめることも必要だが、様々な遊牧民族が集結するイラン南西部のザクロス山脈周辺地域は、クルド族・ルル/バフティヤリー族・ラキ族・カシュガーイ族・アフシャール族・ボーヤ アーマド・トルカシャバンド・アラブ系(ハムサ)など等遊牧民のメッカで、文様の比較に頼った分類が難しい。
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ルル族 サドルバック(ホリジン) 表面=交互スマック、底=パイル、袋の留め口=綴れ織り
このサドルバックはルル族を代表するもので、James Opie氏の『TRIBAL RUGS』の中でも
何度も取り上げられている。このサドルバック(ホリジン)の第一の特徴は、とても大きいことである。おそらくロバもしくはラマが担ぐのであろうが、動物がかわいそうになるほど巨大である。険しい山越えなので、ラクダはほとんど用をなさないようである。
幅が1メートル、長さは2メートルにもなり、袋だけでもかなりの重量である。ちなみにこのホリジン(トルコ語でヘイベ)は両脇をほどいて、開口部を繋いで敷物としてよく売られている。
そして、その大きさゆえか、目いっぱい詰められる家財道具の重量に耐えられるように、最も破れやすい、袋の底部分が絨毯(パイル構造)になっているものが殆んどである。もちろん底パイル構造がルル/バフティヤリー族に限られたわけではないが、彼らの袋物の底は小さな塩袋などにおいても、パイル構造が良く見られる。
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    ルル/バフティヤリー族 塩袋 表面=スマック織り 底=パイル
このルル/バフティヤリー族らしいモチーフに溢れる塩袋も、底の部分にはパイルが使われている。
4000メートルを越えるザクロス山脈の峠を越えて、300キロにも渡る過酷な移動をする事でも知られる勇猛果敢なバフティヤリー族にとって、大型の袋ものは必要不可欠である。
そして、その重たい袋物の最も負荷のかかる部分は袋の底であるだろう。

遊牧民にとってはその部分(袋の底)を絨毯=パイル構造にすることは自然なことだったのでないだろうか?様々な毛織物の構造(キリム・スマック・ジジム・ジャジム・紋織りなどなど)のなかでおそらく最も頑丈な構造を持つものはパイル=絨毯だと思う。
絨毯がいつ頃、どんな人々によって織り始められたのか?というトピックは絨毯研究者や絨毯好きにとって純粋な疑問でありこれまでに様々な議論がなされてきた。

もしかして、絨毯=パイルという構造は、袋の底として始まったのだとしたら面白い
かもしれないなどと想像してみると楽しくなる・・・・・。
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by caffetribe | 2008-04-26 18:56 | 毛織物の技法
シルクロード研究所発行の機織研究を読み進めるうちに、シルコロードの東西を問わず織り機
の形態は次の4つに分類されるらしい。

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地機(パキスタン西部バローチスタン州 ブーラフィー族) 写真提供 K.M.氏


1.地機・・・・地面に直接杭を打って、タテ糸のテンションを保つ方式。
 テントベルトやジャジム(イラン系)もしくはガジャリ(ウズベク系)など細幅の毛織物が多い。
 遊牧民などが青空の下で長~く色糸を張っているの光景が典型的。

2.水平式枠機・・・・枠機は水平と垂直に分けられるらしいが、タテ糸が水平に張られていてそのテンションを保つのに枠が用いられる方式。
 遊牧系部族の多くがこの方式でキリムや絨毯を織っていると考えられる。ただし大きい枠は持ち運びに不便なため、遊牧民と定住民では枠の大きさが異なるであろう。

3.垂直式枠機(傾斜式も含む)・・・タテ糸が垂直方向に張られてテンションを保つ形式。傾斜式とは立枠が固定せずに、壁などに立てかけて置く方式。ただししっかりとした壁などが有る定住者向きか?織手の体勢が楽なので、持ち運びの必要がない多くの商業的絨毯の多くはこの方式であるようだ。ただし、トルコでは移動する遊牧民もこの垂直式を使っているのを見かける。

4.高機・・・より高度な技術を要する時の織り機でヤズドの有名な空引き機などがこのグループである。
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          イランヤズド周辺が有名な絣織の高機
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イランヤズドで織られるジールゥと呼ばれる織物(空引き機)
巨大な織り機なので全体は写真に入らない。
その割りに織られるのものはいたってシンプル。


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イランカスピ海沿岸のマザンダラン周辺の織り。比較的繊細な織物が織られる。

ここで織りの構造について大切なことに気がついた。

1番と2・3・4番には時として織りあがる織物の構造《Woven Structures》 が大きく違うことが有る。

簡単に言うとタテ糸が表にくるか、ヨコ糸が表にくるか違いである。
私たちが目にするほとんどの織物はヨコ糸が表に出る構造である。キリムとして知られる綴れ織、以前に紹介したスマック織、ジジム(縫い取り織り)、錦などヨコ糸(色糸)で柄を表現する。

a0051903_1916169.jpgそれに対してタテ糸が表にくる構造がある。おそらくもっとも古くはこの構造ではなかったかと創造している。  ←の写真では見にくいがタテ糸にが染められている。
この代表的なものとしては、細幅のテントベルト、そしてジャジム(イラン)、ガジャリ(ウズベク)
そしてガーナのアシャンテ族が織ることで有名なケンテクロスなどが上げられる。
他にも、インドネシアやインドシナの山岳少数民族のどの布にも見られるかも知れない。
言い方を変えれば、とても原始的な構造?といえるのかも知れない・・・。




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テントベルトの表と裏。部族は特定できない。

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シャーサヴァン族のものと思われるテントベルト。
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トルクメン族のテントベルト(テントの枠に巻きつけて壁のような役割をする)
タテ方向に糸が渡り、柄を作っていることがわかるといいのだが・・・。
このタテ糸表の構造は裏側も表と違った味わいがあって美しい。
原始的では有るが、とても愛らしい織物である。

《参考文献》
Handlooms of the Silk Road Silk Roadology 13 (シルクロード学研究より)
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by caffetribe | 2008-04-15 19:06 | 毛織物の技法
技法について書こうと考えているうちに時間が経ってしまったが、イスラムアート紀行のoriさんから大変に貴重な資料を貸して頂き、「これを待っていたのでは!」という偶然性に驚いた。

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資料1.アゼルバイジャン人の地機 ジャジムを織るシャーサヴァンと思われる。
【1.部族の毛織物】 <地機>

その資料は奈良の「シルクロード学研究センター」が出している《SILK ROADLOGY》というシリーズのなかの『シルクロード織機研究』VOL.13というものである。
今回の特集では4名の民族・考古学・染織技術・民族織物技術というそうそうたる研究者の手による丹念なフィールドワークに基づく膨大な調査報告書である。
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資料2.イラン:クルド人の地機  テントの外で織る典型的な織り機
【1.部族の毛織物】<地機>


地域的にも最も興味深い、イラン・ウズベキスタン・中国新疆ウイグル地区である。
これだけの専門家による共同研究なので圧倒的な情報の量であり、全体の紹介は難しいのだが、ほんのさわりだけでもかなり面白そうである。
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資料3.イラン:トルクメン人の傾斜式枠機
 【2.家内製手工業的=軒先で織られる】<垂直式枠機>

最近とても織物に興味が有る人と出会い、布=織物とは何ののだろうか?という原点に帰るような思いを強くしていたことも、この本との出合いの喜びを大きくしたのかも知れない。
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資料4.イラン:ペルシア人の垂直式枠機 
 【3.都市の工房の絨毯(産業的)】<垂直式枠機>

前田 亮先生による織物の起源と発達そして伝播という内容のテキストから魅せられた。
『機織は最初の生産機械である。』という言葉に学者としての意気込みが感じられる。

以前に紹介したように、これまでは織りの技法については無知であった。文様ばかりを分類の判断にしてきたが、ある時に、文様ではどうしても分類が出来ない絨毯に出会い、技法をみることでストンと『こうだったのか!』と解ったことがあってから技法の面白さに気がついた。

また男性が織るもの女性が織るものについても地域や織り手の置かれる生活環境の違いなど
Jon Tompson氏の分類とも関係が深いということも解ってきた。
繰り返し紹介しているが、織り手側にたった絨毯の分類である。

1.部族の生活の道具として織られる毛織物やキリム 【写真資料1と2】 主に女性
 <サドルバック・塩袋・キリム・小さい絨毯等など。> 水平式織り機が多い

2.村単位で織られる素朴な絨毯やキリム  【写真資料3】 女性が多いが男性もあるかも
 <主婦を中心に織られる、家内産工芸品。売ることもも多い> 垂直・水平式両方見られる

3.都市の工房で織られる緻密な絨毯やキリム 【写真資料4】 地域によっては男性が多い
  <分業性の販売を目的に織られる。ペルシア絨毯など> ほとんどが垂直式枠機

4.宮廷御用達用の絨毯。
  <シャー=イランやスルタン=トルコの為の豪華な絨毯> 

この資料の中でも、職能として産業用【売る為の絨毯】やキリムは男性の織り手も多いと書かれていて、イランのカシャーン、ヤズド、エスファハーンなどはほとんどが男性と記されている。

このほかにもイラン人系とトルコ人系の機織の相違などについてもかなり詳しく記されている。
                
これからも、少しづつ紹介して行きたい資料である。

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 イランのホラサーン州のアフガニスタンにも程近いサンバシオン村(モンゴル系の部族が10件ほどの集落)で注文された『ギャベ』風の絨毯を織る女性。<水平式枠機>

写真資料の1~4は『シルクロード織機研究』VOL.13からの引用。

《参考文献》
Handlooms of the Silk Road Silk Roadology 13 (シルクロード学研究より)
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by caffetribe | 2008-04-11 21:11 | 毛織物の技法
遊牧系部族の人たちは驚くほどの簡素な織り機で様々な複雑な技法を生み出し、それらを多様に変化させながら織りの構造(Woven Structures)を発達させてきた。
特に驚くべきことはウィーブバランス=タテ糸とヨコ糸の均衡が完璧で、硬くもなくゆるゆるでもなく収まることである。
             
初心者は特にこのタテ・ヨコ糸のテンション(張り具合)に散々に悩まされる。 特に羊毛のような滑りにくく、手紡ぎまどの不均一な撚り糸を使う場合相当な経験がなければ、パイル(絨毯)と綴れなど違った技法を組み合わせながら、上下左右をゆがみなく織るのは難しい。

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これは遊牧民を写した写真の中で最も好きなもののひとつ。おもちゃの織り機で練習(遊ぶ?)トルクメンの子供。 Mr.JON THOMPSON 『Carpet Magic』から

様々な織りの技法が有る中で、これまでに続けて紹介してきた 
シャーサヴァン族のスマックという技法を紹介してみたい。
                      
《シャーサヴァン族の得意な織り技法》スマック技法
a0051903_17552311.jpg図のように通常2本のタテ糸にヨコ糸を巻きつけるようにして、一列ずつ端から端まで表現したい柄を色糸を変えながら織り込んでいくという、大変に手の込んだ時間のかかる作業がスマックである。

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↑1.プレーンスマック(順目スマック)タテ糸(2本取り)に左から右へとヨコ糸を巻き取りながら一段づつ進む方法。同じ向きに巻きつけて行くため揃ったきっちりした印象をもつ。
 特にシャーサバン族のマフラシュやドラゴンスマックと呼ばれる南コーカサス地域によく見られる技法。

a0051903_18142635.jpg←は典型的なスマック技法のマフラシュ(寝具入れの部分)
裏側はまるで絨毯の結び目のようなひとつひとつの糸の絡みが見て取れる。
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実は織りの構造については文様や色などと比べ、あまり興味がなく、当然その技法などもほとんどしらなかった。数年前にMarla Malletさんの『Woven Structures』という本に
出会い、何十という遊牧民の織り技法のバリエーションに驚きそれを克明に調べ構造のイラスト共に丹念に調べ上げた 著者の執念ともいえる探究心に驚いた。
            
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2.逆目スマック順目とは逆に一列づつ反対方向に糸を巻きつけていく。揃った感じはな
いが文様に表情がでて立体感が出る。。
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イラストはMarla Mallet著『Woven Structures』より

《参考文献》
『woven Structures』 Marla Mallet 著





  
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by caffetribe | 2008-03-28 18:35 | 毛織物の技法
トルクメンジュワルには絨毯を織る女性たちにとっては、最高の見せ場となるのではないかと思える。トルクメン絨毯研究家のM氏のコレクションで絨毯研究会の会報の12号【自慢の絨毯】のなかで紹介されているTEKK支族による赤ジュワル(KIZIL CHUVAL)はまさにそれを証明するかのような気迫に溢れたものである。
この絨毯を紹介しているM氏によれば・・・
〔平織りとパイルが交互に並ぶこの特徴的な赤/白ジュワルは通常そのパイル部分(ボーダー)がつう9本程度、それに対してこのコレクションはなんと16本のボーダーがあるという。〕

また特筆すべきは、この絨毯の結目の数とそのパイル技法である。ここで詳しくは触れないがよくペルシア絨毯屋さんやトルコのヘレケ絨毯などが話題にするノット数である。

■この絨毯は手で紡がれた良質の羊毛に同じく手紡ぎの羊毛糸を使用して、それらを凌駕するほどの結び目を誇り、さらに文様の角度にエッジを利かせるためにオフセットという高度なパイル技法を駆使している。
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TEKK tent-bag(chuval) Turkmenisutan 19th
(これは典型的な白ジュワルである。ちなみに9本のボーダー)
*Jon Thompson collection 1993 NY SOTHEBYS AUCTION Catalog より

■シルクや木綿の糸に比べて、切れやすく滑りにくい羊毛糸をタテ・ヨコ糸に使用して、ここまでの驚異的な手仕事を見せるのはやはりトルクメンの真骨頂で他の追従をゆるさない。
またこのCHUVALはラクダなどで移動の際のはこぶの両側に掛けられる事もあるし、テントのなかでも最も目立つフレームで出来た枠に吊り下げられる。
また、婚礼の際にはこのCHUVALや幅の狭いJALLARと呼ばれる袋モノに花嫁衣裳や結納品が詰め込まれ、人目を引く。
■そのためか、トルクメン系のどの支族もこのCHUVALには織り手の誇り溢れる、美しい伝統的文様がきっちりとまた、バランスよく織り込まれている。

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TEKK tent-bag(chuval) Turkmenisutan 19th これも上と同様のカタログからの引用
CHUVALギュルとも呼ばれるテケらしいきりっとした文様が立て横整然と並べられている。
セカンダリーギュルその間にある文様もテケの典型的なものである。

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ERSARI tent-bag(chuval) Turkmenisutan
*Jon Thompson collection 1993 NY SOTHEBYS AUCTION Catalog より
上の典型的なトルクメンギュルを徹底して織り込むテケと対極的なのが、エルサリ支族ではないだろうか?中世に商業都市として栄えたBUKHARAの影響をうけて洗練されたともいわれるアムダリア川周辺に定住したエルサリ支族(ベシールを含む)のこのCHUVALはすぐお隣のUZBEKISATNの絣(IKAT)と比較しても面白いといえるかもしれない。

ちなみにこのジュワル一目惚れしたのだがはオークションで競り負けた思い出の一枚である。
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by caffetribe | 2007-03-27 16:11 | 毛織物の技法
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そもそもキリムとは何?
「キリムのある素敵な暮らし」主婦の友社プラスワンリビング別冊にあるキリム事典によれば、
「キリムとはトルコ語で『平織り(つづれ織り)の技法で織られた、羊、山羊、ラクダなどの毛の織物』とあります。こうしてみるとキリムは織りの技法名ということも出来る、ちなみにパイル構造=絨毯とは違う平織りのグループに、ジジム・スマック・ジリ・ブロケードなどの様々な技法があり、これらをキリムと呼べるかどうかは難しいところだ。厳密にはつづれ織だけをキリムと呼ぶという人もあれば、これら多くの平織りをキリムと呼んでもかまわないという人もある。

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また、地域によっても呼び方は違う。イランではギリムもしくはゲリムこれはテヘランと地方(訛り)によって違うようだ。
アフガニスタンでもはゲリムとかケリムとかに聞こえる。
カスピ海の東西地域の西側コーカサス地方と東側のトルクメン地域ではパラス(特に大型サイズのもの)と呼ばれているし、北アフリカではハンベルと呼ばれることもあるようだ。

語源については良くわかってはいないようだが、古いトルコ語に詳しいH氏によるとトルコ語のルーツにキリムという語源は見つからず、イランやアフガンのなまったような(ギ)もしくはゲリムという言葉が、前回紹介したシュメール語の伝統を引き継ぐといわれるマーシュアラブ(沼地のアラブ人)達の使う(葦を巻く)という行為ギリームに近いのかも知れない。




はつりのない綴れ織り(横糸が絡まない)

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これも綴れ織りの技法ですが、横糸間のはつりが出ないように、同一の縦糸に糸を掛けるという
技法です。これによってはつり(穴?)がなくなり強度が出るようです。
イラン系の遊牧民にこの技法が多く見られます。
しっかり撚られた丈夫な糸でこれを行うと少し重ねた部分が少し盛り上がった感じがします。


インターロック(横糸を絡める)
これも前の綴れと同じようですが、横糸どうしを絡める点が違います。前の技法よりさらに強度は
強くなります.重なる場所違う色糸の場合少しすっきりしない感じはありますが,使い込んで馴染ん
でくるとやはりその部分から裂けたり穴が広がったりしないので安心感があります。
やはり南イランなどの移動距離が長く砂漠などの環境に厳しい地域の部族に多く見られます。 
   
シングルインターロック
上の技法で一段の横糸に一段の横糸を絡める技法。

ダブルインターロック 同様の技法で二段づつの上下の段を絡める方法。
 さらに強度がでて丈夫なものになります.アフガニスタンのウズベクキリムや移動距離の
 長いことで知られるイランのバクチアリ族などにもよくこの技法がみられます。



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シングルインターロック(ヨコ糸を絡める)
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by caffetribe | 2006-10-27 12:24 | 毛織物の技法
a0051903_16265583.jpg遊牧系部族の人たちは、かなり古くから羊の毛を加工して様々な道具として、生活の中に取り入れて来たようだ。例えばクルド族の人たちは、おおよそ7000年もまえから、羊を飼いその毛から糸を紡ぎ、毛織物にしてきたといわれている。
もちろんその当時の毛織物はほとんど風化してしまって発見するのは難しい。

トルコ人のキリム研究家が、来日した時の講演会のスライドで10000年前に織られたという平織りの毛織物の断片を見せてもらったが、どうも本物か疑わしかった・・・。
絨毯ではかの有名な、サカ族の墓から出土したパジリク絨毯(2400年前)があるものの、キリムではそれほど目だった(状態の良い形での)発見はされていないようだ。
むしろ綴れ織という技法では、アンデスなどの南米地域ではなぜか平気で2000年ほど前の綴れ織のマントなどが出土しているが・・・。

ではどうしてこの西アジア~小アジア地域で毛織物がたくさん織られていたことが解るかというと、羊の毛を刈るための道具が多数出土している。この毛を刈るための石器は板状スクレイパーと呼ばれているが、ヨルダン南部などのカア=アブ=トレイハ遺跡などからも多数出土しているようだ。おそらくベトウィンと呼ばれる遊牧民のものであろう。
このあたり(ヨルダンあ~シリア)については【写真でイスラーム】のブログで詳しく見ることが出来る。

また現在のトルコ語と考えられている『キリム』という言葉も、トルコの歴史に詳しいH氏が言うには元々のトルコ語の起源にキリムという言葉は見つからず、イランでよく使われるギリムが語源かも知れないという事であった。
以前紹介したイラクのマーシュアラブの部分でシュメール人が表した粘土版に表記された最古のシュメール語に葦を巻くという動作をギリームとしていたという事があり、おそらく何かの素材を巻きつけて織りものないしは、葦舟や葦の家を作るのに使われたのかもしれない。





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という事で、これが最も典型的な綴れ織り、ハツリが入っているもので、欧米などではタピストリーウィービングとばれるのもである
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上の部分の技法図。
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今後すこしづつ技法についても紹介して行きたく思います。
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by caffetribe | 2006-10-18 17:00 | 毛織物の技法