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部族の絨毯と布 caffetribe

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部族の絨毯と布

カテゴリ:Life is color( 8 )

いよいよアジアにまつわる赤い色の展示がはじまりました。
今回の展示は”手仕事フェスタ2.”のアジアをもっと深く知るイベントの中のひとつです。
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赤い色については、これまでに少しずつ紹介してきましたが、文化服装博物館の「赤い服」の展示会にも「色の持つ意味に着目したことが面白い」という感想が多く寄せられたようです。アジアの先住民や部族にとって赤はやはり特別な意味があったという思いが膨らみます。
今回の展示でも、アジア各地の手仕事があつまりました
トルクメンの絨毯・装身具・トルコ・イラン・アフガニスタンのキリムや絨毯、チベッタンラグ、インド更紗、カンボジアシルク、インドネシアのテキスタイル、中国家具などアジアの赤を飾りつけ、エスニカさんのお店が赤に染まってゆきました。
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そんな時思い出したことがありました。
20年も前の「日本の美・いにしえの色」というテレビ番組(NHK)で紹介された石川県の輪島に近い鳳至郡柳田村にある「赤い部屋」の話です。詳しいことは忘れてしまったのですが、輪島塗で有名な地域ですが、ある人が自宅の土蔵の一室に床・壁・天井すべて赤い漆塗りの部屋を作ったというのです。
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「赤い部屋」の主人は、畑仕事の合間に何年もかけて自分のために作ったそうで「ほとんど誰もいれずに、ただ自分が時々部屋に籠もって気を鎮めていた」と説明していました。どうして雪深い寒村にこんな豪華な部屋を自分のために作ったのかとても疑問に思っていました。
子供の頃なにかで、真っ赤な部屋に閉じ込められると「気がおかしくなる」と聞いたことがあって「気が鎮まる」
とは対極にあると思ったからです。
その後、先に紹介したトルクメン族など,テントの中を赤で覆う人たちの存在を知り,ますます疑問が深まりました。
現地のトルクメン族に聞くと、なんと赤に囲まれるとリラックスできると言うのです。
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インドの神話「リグ・ヴェーダ」に度々登場する森のカミ「ルドラ」は赤い髪と充血した目で”野人”のように裸で森を咆哮しながら走り回ります。「ルドラ」とは「赤」・「血色の良い」・「泣かすもの」等の意味があり「ソーマ」という酒に酩酊し、あるときは森に住む賢者や行者に恩寵を施し、あるときは荒ぶるカミとして畏れられています。これは奥三河の「花祭」などに登場し悪霊を追い払う鬼達の赤い仮面と赤い装束にも共通します。
また、私達の良く知るサンタクロースも3世紀末の小アジア「現在のトルコ」がルーツで赤い帽子に赤い外套を着てクリスマス・イブの晩に家々を訪れます。
このほかにも赤い衣装には特別な意味があったようで、旧約聖書のモーゼからシベリアのシャーマンにいたるまで「赤い服・赤い織物」には呪術的世界に満ち溢れています。
それらは同時にユーラシアアジアをひとつに結ぶ「赤い道」としての意味を持っていたかもしれません。
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多くの方々の協力で実現したアジアの赤い世界、そこに居ると、気が静まるのか、あるいは高揚するのか、是非体験してみて下さい。

期間は11月1日までです会場は青葉台エスニカ
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by caffetribe | 2009-10-04 11:58 | Life is color
どうしてここまで赤い色にこだわるのか、人はなぜ色にこだわるのか、その答えは見つからないだろうが人は様々な色を出すためにとてつもない努力を重ねてきたことは間違いないようだ。
そして、鮮やかな色を出すこといつの時代でも最先端の技術であり、古代にとっては魔術師のような力を持つ存在でもあったかもしれない。
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この写真は以前にも紹介したかもしれないが、バルーチ族の修復師がバルーチ特有の濃く、暗めの赤を出すために、茜の染液にわざと胡桃などの渋皮を入れることで出てくるタンニンの作用で濃い赤を染めている。
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           ≪三枚ともバルーチ族のサドルバックの表皮 パイル≫

これに対して、トルクメン族は鮮やかな赤を好むようだ。トルクメン絨毯や衣装、装身具などどれも赤い世界であることは紹介したが、特に絨毯に使われる染料は時代と共に変化して来ているようだ。
合成染料が出現するのが1856年イギリスの王立研究所でマラリアの特効薬である「キニーネ」を合成している最中に偶然出現したの赤褐色の沈殿物をアニリンに変え出来たものを染めてみたところきれいな濃い紫色が出来たのがその最初と言われている。この発見者はまだ18歳の若者でウィリアム・H・パーキンがこの色にフランス語で「葵」を意味する「モーブ」という名前をつけたのは有名な話であるが、これ以降あっという間に合成染料の波が広がり、かの有名なドイツのバイエル社をはじめ合成染料は破竹の勢いで広がっていった。
ただ出来た当初のアニリン系染料は色落ちが激しく、赤は薄いピンクに青紫はグレーに変色したという事実もあるようだ。
こうして、植物や鉱物から抽出した天然染料の時代は終わりを告げるが、それ以前の人々の色に対する思いは知るほどに興味深い。
日本では「赤」の天然染料と言えば紅花を第一に上がる人が多いが、エジプト原産の紅花は染色技術が難しいことや堅牢度が低いことなどから、日本以外ではあまり使われなかったようだ。
それよりもなんと言っても「茜」が西・中央アジアでは一般的である。この茜にはかなりの種類があるようで以前紹介したドイツ人研究者H・BOMMER氏はこのあたりの専門家である。
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天然染料を知るにはこの本が様々な意味で最良と思われるが、日本にも「草木染」めという言葉を創造した山崎家の存在は素晴らしく、現在も高崎の工房で草木染の可能性を追求されているようだ。
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                ≪H・BOMMER氏の本にある茜の草≫
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             ≪山崎家で見た茜(根)の乾燥したもの≫

天然染料が使われたキリムや絨毯では圧倒的に茜系が多いと思われるが、稀にラック(臙脂虫)やケルメスダネと呼ばれる虫の巣から抽出した赤もあり、これらは茜に比べて色彩的に紫~ピンク系の色だと言われている。中南米に多いサボテンにつくコチニールの同様に強烈な赤を抽出できる。
インドシナ半島でも赤い色が好まれ、特にカンボジアの絹絣(クメールシルク)のほとんどは色気のある艶やか赤い色で染められている。この地域ではラック(臙脂虫)やインドでよく使われる蘇芳が用いられるようだ。
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                ≪クメールシルク サンポッットホール 腰巻布 絹絣≫

昨年の手仕事プロジェクトでこの絹絣を何枚も掛けてみると、その空間だけがなんとも妖艶な雰囲気が出て
あらためて色の持つ不思議さに驚いたことがあった。
「色」とはそもそも色気などがしめすように、本能的な部分を揺り動かす働きがあるように思えてくる・・・。

10月1日から手仕事フェスタ2.がスタートします。最初の展示会青葉台「エスニカ」さんではこの「赤」をテーマにアジア各地から様々な手仕事を紹介します。

トルクメンの絨毯、衣装、装身具・トルコのキリム・ウズベクのスザニ・インドの更紗・カンボジアのシルク・チベタンラグ・インドシナ少数民族のテキスタイル、中国家具など等、どどんな赤に出会えるか、また「赤」を集めることでどんな世界が出現するのか楽しみです。
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by caffetribe | 2009-09-30 00:22 | Life is color
文化服装服飾博物館の「赤い服」の展示も残すところ3日程になりましたが、時間が許せばもう一度足を運びたいほど、充実した濃い内容の展示です。ギャラリートークでも、学芸員の方が世界には本当にたくさんの赤い服があり、そのどれもがとても大切なものとして着続けられている。というお話がありましたがまさに「命の色」として愛用されてきたことが伝わってきました。
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                 ≪ イラン 南部 カシュガイ族の少女≫

また、面白かったのこれまでもかと言うほどの赤い世界の片隅に緑のプランターが置いてあり、不思議に思っていると赤いものを見続けると網膜にハレーションを引き起こし緑色の残像が残るいう解説と共に、ドクターが「手術の際などに着る手術着が緑色なのは、手術時に赤ばかりを見続けると残像で色が見難くなる現象が起こらないように、時々反対色の緑を見て、目を休めるということでした。同様に食肉を扱う人たちの作業着も青い色が多いのはそんな訳があるそうです。赤を見続けるということは、脳の中では緑色が反応しているという不思議な事実でした。
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                   ≪藍の生葉 高崎 草木染工房≫
赤には色々な効能もありそうです。よく赤い下着を着けると冷えないとか、血行がよくなるとか、はたまた自然治癒力が高まるとかある意味迷信のような話がありますが、非科学的でない話にも実は効果があるのではと思えてきます。博物館の展示でも特に赤いスカートや腰巻類が多く展示されていたように思います。
合成染料が出現するまで、自然界にあるマテリアルだけでどのように赤い色を抽出してきたのかは興味のあるところです。同時に深い赤い色を出は、いつの時代でも価値のあることであったように思えます。
最初に赤いものを集めて展示したときに、大変に面白い事実をしりました。
「染めは薬に始まる」という持論を展開された村上道太郎さんという染織家の本の中のお話です。
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                  ≪茜染めの糸≫
シベリアのアンガラ川支流のマリタ遺跡という2万5千年前の石器時代の遺跡から、赤い枕をした子供(3~4歳程度)の遺骨が出土し考古学者の中で話題になったことがあると言うものです。
当時は繊維などを織る技術は無かったかもしれませんが、赤鉄鉱という鉱物を意識的に子供の頭の下に置いていたのではないかいう説です。考古学者達は「この埋葬儀礼には、当時すでに死後も生前と同じ生活があるとの観念があったのではないか。」というものす。同時に亡くした子供が再び生命を得られるような命=血としての象徴が「赤い枕」ではなかったと言うのです。日本でも縄文時代の遺跡から、住居の直ぐ入り口に幼子の遺骨が埋葬されていることがあるそうです。古代では死は再生への入り口でもあったであろうし、子供を小さくして亡くした親の気持ちも痛いほど伝わってきます。新生児は青ではなく赤ちゃんです。

赤は生命の色といえるのではないでしょうか?
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                ≪トルクメン ベシール ラグ クラウドバンド(雲龍)デザイン≫
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by caffetribe | 2009-09-27 00:04 | Life is color
 世界の先住民族、特にユーラシア大陸の少数部族にとって「白・黒・赤」の三つの色は象徴的な色として儀式や祭りには欠かせない色でした。特に赤には魔を払う魔除け的な意味があると信じられてきたようです。

中央ユーラシアを東西に駆け抜けたチュルク系騎馬民族の達にとって「赤い色」には特別な意味があるようです。中でもトルクメン族は絨毯・衣装・刺繍布・フェルト・金属工芸(アクセサリー)などにこれでもかというほど
赤の色を使用してきました。赤い色の持つ呪力を信じてきたといえるかもしれません。

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             ≪トルクメン ヨムート族 絨毯の部分 ギュル文様 ≫

このブログでも何度も取り上げていますが、トルクメン族は中央アジアの草原地帯をアハル=テケという優秀な馬に乗って移動生活を続けて来た勇敢な部族です。ある時代には東アジアの漢民族の土地に度々侵入し
あの偉大な万里の長城を築かせるに至り、ある時は小アジアのアナトリア半島に攻め入り、セルジュク朝トルコを興したことでも知られています。何万キロにも及ぶユーラシアを移動しても彼らが勇猛果敢でいられるには、発達した「オイ」と呼ばれるドーム型テントの存在があったからではないでしょうか?
砂漠の猛暑や山越えの厳しい寒さなどの激しい気候条件や、周辺地域の多民族とのやり取りなど、数多くの困難を乗り切りながら旅を続けるには、暖かく、居心地の良いテントという移動型住居の存在が欠かせなかったと想像できます。
そのテント内を飾るのが彼らが好む赤い絨毯です。
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              ≪トルクメン テント内の再現? JAPANTEX2007より≫

トルクメン族のテント「オイ」モンゴルではゲルの中はおそらく赤い絨毯で埋め尽くされている事でしょう。それほど彼らの織る絨毯には赤い色が使われています。
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            トルクメン絨毯  アフガニスタン北部  羊毛≫

さらに、彼らが生活で使う様々袋物(ジュワル)は衣類や、食料、道具などの収納袋として周りに飾られます。
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                 トルクメン族 teke フェルト製の袋物 刺繍とアップリケ≫

また女性達の着ている美しい衣類(チルピィ)も多く赤字か黒字に赤い刺繍で飾られます。ごく稀に黄色地の
チルピィがありますが、これは男子を産み成人させた女性が、白地は63歳を、迎えた女性だけが着られるモノだと聞いたことがあります。
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     トルクメンの女性達 J.Thompspn 1993 sazabys catalogより引用≫


余談ですが、このチルピィは袖を通して着る場合と頭から被る袖のないものがあるようですが、日本にも庄内地方(山形県)に「かつぎ」と呼ばれる被り物があって驚きました。トルクメン族はトルコ=モンゴル系なので時々日本人のような顔立ちの人がいて驚くことがあります。
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                ≪トルクメンの衣装チルピィ 袖のように見えるのは飾り≫


また、もうひとつトルクメンの魅力に優れた金属加工技術によりアクセサリーの手仕事があります。
日本でもポーラ美術館がコレクションを持っていて、それだけを集めた本「シルクロードの赤い宝石」も出版されているので、いつか紹介してみたいです。
今回の文化服飾博物館にも何点かの素晴らしいアクセサリーが展示されていました。昔のものはシルバーに赤い宝石(紅玉瑞=カーネリアン)が使われているようでした。騎馬民族でもあるトルクメンが馬具や蹄鉄、鐙などの乗馬用の金属加工技術に長けていたことは良く知られていて、日本に於ける蹈鞴(たたら)製鉄技術集団との関連性も興味深いようです。蹈鞴(たたら)=タタール(韃靼人)なども彷彿させます。
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                  ≪トルクメンの装身具 金属加工 IPAKYL HP より≫


トルクメンといえば「赤」。この赤い色に魅せられた人々の手仕事を10月より紹介します。
詳しくはこちらから。 手仕事フェスタ=sui=vol.2
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by caffetribe | 2009-09-19 00:20 | Life is color
ここ一ヶ月ほど「赤という色」に出会う機会に恵まれた。
10年ほど前になるが、部族の赤い世界という企画展を何度か行った。当時集中して収集できたウズベク族の手仕事「スザニ」トルクメン族の伝統的「トライバルラグ=部族絨毯」、カンボジア・クメール民族による絹絣「サンポットホール=イカット」そしてビルマ・シャン族の漆工芸などである。
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                 ≪1998年 展示会のDM写真≫

集めてみると、どんどん「赤い色」のもつ不思議な魔力のような力に魅せられ「赤」にはどんな意味があるのか
世界にはどんな赤い色の手仕事があるのか、赤にまつわる世界に引きこまれて行った。

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   ≪ウズベキスタン タシケント 刺繍布 スザニ  ≫
赤にのめりこんだ原因のひとつがこの布との出会いであった。当時はスザニブームの少し前で、ソ連が崩壊して間も無く始まったウズベクの市場経済への移行期でもあり、ソ連時代に隠し持っていたアンティークな手仕事が放出されるというタイミングでもあった。知る人ぞ知る世界の至宝のひとつであったウズベクのスザニイカット(絹絣)を巡っての争奪戦が始まったばかりであった。
前置きが長くなったしまったが、このスザニはそんな時代に日本に渡って来たもので生成りの木綿地がほぼ見えないほどのみっちりとした刺繍が施されている。この大胆な構図はまさに力の象徴なのか、円形のモチーフは太陽とも月とも石榴とも言われるミステリアスサークルである。
渋谷のあるギャラリーで展示したときにこの布を正面に掛けていたら、あまりもインパクトが強すぎるので
取り替えて欲しいというクレームが来たこともあった。

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 ≪ウズベキスタン フェルガナ地方 チャパン 絹絣 イカット 文化服飾博物館所蔵≫
19990年代、目の聞いたバイヤー達は、価格差の大きいウズベキスタンからいち早く逸品を入手し、イスタンブールなどを経由して欧米のコレクターや美術館にディールしていた。まさに一攫千金のチャンスがあった時代である。

話は変わって、現在新宿にある文化服装学院服飾博物館において「赤い服」~日本と世界の様々な赤~という展示会が行われている。会期は9月30日まで先週末にはギャラリートークも行われた。
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さすがに世界各地の民族衣装のコレクションはトップクラスのモノばかりで見ごたえのあるものだった。
同時の「赤い世界」が展開され会場にいるだけで、ワクワクし、大げさだが体が火照るような感覚があった。
実は2回も見に行ったのだが、その度に高揚した気分を味わえた。

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        ≪文化服飾博物館出版 「世界の民族衣装」からの引用。≫

上から韓国・中国・アフガニスタン・シリアとどれもが見事な「赤い服の世界」である。
もちろん日本を代表する打掛やラシャの陣羽織など博物館の自慢のコレクション総動員の展示である。
展示では赤い染料なども展示され染織ファンには親切な展示にもなっている。

10月からは手仕事フェスタsui. vol2でもアジアの赤をテーマにした展示を予定している。
少し涼しくなってきた秋の入り口に「赤の色の不思議」を出来ればしばらく続けて見たいものだ・・・。
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by caffetribe | 2009-09-14 23:56 | Life is color
天然染料だからといってよいとか化学染料はよくないというものではないが、やはり過去の素晴らしい植物や虫などによる染色技術をみると圧倒される。
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 ケルメス樫という樫の木に作られた小さな虫の巣から取る赤い色。小枝のあいだに雌が赤紫のビーズのような玉を作る。これを酸に溶かしてから乾燥さて染料とする。
このケルメス樫はユーラシアが原産でフランス・スペイン・イタリアなどに分布。

ペルシア語で虫をケルメスというのですが、まさにケルメス=虫。
赤という意味のギャルムと頭の綴りが違うが音が似ている。

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これは17世紀のイスファハンで織られたといわれる絨毯である。
化学染料が最初に出来たのが、1859年のイギリスということなのでこれはまさしく天然の染料だけで染められたことになる。
ケルメスが使われているかもしれない。
ちなみに、最初の合成染料はマラリアなどの特効薬を開発中に偶然に廃液が赤くなるのを、ヒントに出来たといわれいて、この染料はその後急速に広まるが、退色が激しく暫くして消えていく。
               
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これも18世紀のアナトリアキリムであるが化学染料のない時代に織られたものである。

 両方に使われている、赤とピンクの色が素晴らしい。
このピンク色は一見化学染料のように見える。 私たちは先入観として、ケバケバしい色は化学的な印象をうけてしまうようだ。実際にイギリスで有名なオークションのsazabysでこのピンク系の色を化学染料と判断し、本来であれば高額で評価されるものを、外して損をしたという話を
聞いたことがある。色の判断は本当に難しい。

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例えばこの染めは、茜のなかに様々な植物が入っていた。
ひとつは胡桃の果肉。これに含まれるタンニンがより深い色を 出すようだ。ほかにも柑橘類の皮を入れたり、遊牧民の様々な経験と継承が込められている。
                
だから簡単に天然の染料を同定するのは容易でない。
本格的に染料の鑑定を行うには、遠心分離機のような専門の装置が必要で、そのためには1回につき5万円ほどの費用がかかってしまうようだ。
であるから実際には長年の経験からくる『勘』が頼りという事になってしまう。
              
 西アジアで赤の染料といえば、茜という植物の根が一般的。
 しかし茜には微妙に黄色い成分ば含まれていて純粋なピンクや紫を出すのには適していないようだ。日本茜などを見ても夕焼けの空のような穏やかなオレンジ色が多い。

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このマーシュアラブの刺繍布は圧倒的にオレンジ系が多い
そしてかなり華やかな色を組合わせている。染料はといえば化学染料のように思える。しかし化学でも天然でも関係ないような
面白さが有る。色とはいったいなんであろう。
               
学校ではマンセルの色見本などで色相や色彩や補色関係などを学んだ記憶があるが、まったくそういう知識のない遊牧民や先住の土着的世界のなかに深い色を感じることが多い。


《参考文献》
Harold Bohmer 著 『KOEKBOYA』
               

          
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by caffetribe | 2008-03-05 20:00 | Life is color
 イランの大規模な絨毯展示会で大掛かりな天然染料のデモンストレーションが行われたり、草木染をブランドイメージとして売り出す工房などここ数年は草木染(天然染料)の復興が大げさに言えば運動のようにして興っている。

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その理由のひとつは、欧米などの絨毯研究者が化学染料一辺倒になってしまった手織り絨毯市場にたいして、多くの研究書や学会などでその現状を憂い、天然染料への回帰を訴えたとたということがあげられるだろう。
       
ただし、皮肉なことにその化学染料を発見したのはイギリス人でその後この染料を売り出すために、多くの企業がトルコ~イランなどの手織り絨毯産業に目をつけ大々的な営業活動を行った事にあるのだが・・・。

 そしてもうひとつは草木染の絨毯のほうが『売れる。』という空気になって行ったからではないだろうか?

これには幾つかの大きなプロジェクトが関係しているようだ。その立役者がドイツ人化学者で絨毯研究家のHarald Böhmer氏であり絨毯やキリムの染料に関して語る際に、彼の存在を忘れられない。
        
まさに『Life Is Color』とはこの人のことである。

若い頃から化学者として最先端であったドイツの染料研究の知識と実験というキャリアを持って、アナトリアの遊牧民のフィールドワークを積み重ねそれまで記録されていなかった部族の鉱物、虫などから染料として使われるモノとその方法に関する膨大な情報を集めそれを分析し本にまとめた。

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この『KOEKBOYA』というのはトルコ語で天然染料を意味するようだ。
この本には、トルコの遊牧民の染料や染色方法を中心に世界各地に広がる先住民や土着文化のに伝わる染料とその方法が網羅されている。
 
 尊敬するBöhmer先生に昨年のICOCイスタンブールでお会いすることが
出来たのだが、フィールドワークの積み重ねで日焼けした風貌は知らない人がみたら何処から見てもドイツ人には見えない、遊牧民であった。

幸運なことにBöhmer先生ご本人からこの本を譲っていただいた。
(もちろん直筆のサイン入り)ほとんど追っかけ状態・・・。
おまけに70トルコリラという値段と仰せられたのだが、お渡しした100リラ札の御つりがなくなんと50リラ札を下さった。ラッキー!

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内容についてはいずれゆっくりご紹介したいのだが、これは世界的にも最も贅沢で稀少な染料と言われている、貝紫である。

この貝の中の卵巣(もとはクリーム色)の一部が空気に触れると紫色に変化するたいへんに珍しい染料である。

 トルコ~インドが中心であるがインドネシアや中国奥地など世界中の天然染料が化学式と共に掲載されている。
      
Böhmer師は同時にイスタンブールのマルマラ大学で教鞭をとり、次世代の研究者や草木染の後継者をたくさん世に排出している。
また世界的に草木染絨毯の復興を訴えるきっかけとなった『DOBAG』 Dogal Boya Arastirma Gelistirme
天然染料の調査と開発のためのプロジェクトを立ち上げ草木染絨毯の素晴らしさを世に広めたのである。

まあこの『DOBAG』プロジェクトには賛否両論あるのだが、これによって皮肉にもドイツ製の高性能なクロム染料の浸透に少しだけブレーキがかかったといえるかも知れない。

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奇しくも、TOPHANE宮殿で展示されていたアンティークの素晴らしい草木染の絨毯の前でHarald Böhmer氏に再会したのだが、天然染料だけでは考えられない、この目の覚めるような色を出した昔の人々の手仕事に思いを馳せる感慨深い体験であった。
      
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by caffetribe | 2008-02-29 18:47 | Life is color
旅と絨毯とアフガニスタンのFさんから『それは本当に「天然染料」なの』という問いかけがあった。確かに幾つかのサイトでは天然の染料で染めらたものであることを強調しているようである。

イラン映画で『GABBEH』というカシュガイ族の女性と絨毯が主役の映画があった。映画の内容は族長の男親に他部族との結婚を反対されたカシュガイ族の娘がその思いを絨毯に織り込む。その絨毯に現れた文様は彼女の人生そのものである。そして最後は男と駆け落ちして、親父がそれを銃をもって追いかける。というような内容であった。
         
そこに登場する中年のおじさんが水辺で女性と恋に落ちるのだが、準主役と もいえるそのおじさんはアッバス・サイヤヒーさんという絨毯の染め師であった。学校の先生役で登場するのだが、彼が黒板の前で様々な色をおしえてくれる。
        
そして彼が『Life is color』と確か言ったように記憶している。

その時、これはすごい言葉だと思った。

数年後、テヘランの絨毯展示会で彼と偶然に会うことがあった。

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ナマイシカーテヘランの大規模な絨毯展で草木染のブースを 出展していたのであった。

様々な天然染料の素材を並べている。茜(ロナス)=赤、ザクロ(アナール)=黄色右奥の緑色のものは、胡桃の果肉(ギャルドゥ)=茶~黒など等・・・。

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これはそれらの天然染料を使いやすいようにパウダー状にして紹介もちろん販売もしていた。

これは5年ほど前で有るが、この頃からイランでも草木染に対する関心が戻ってきた頃である。

その翌年は大々的に草木染を紹介するイベントが野外の大会場でも行われている。

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これは大変に興味深いパフォーマンスで、サイヤヒー氏と彼の弟さんが責任者として様々な染料を違った媒染剤(明礬・アルミ・鉄など)で染めるとどのような違いになるかを丁寧に試し、その場でも実践し興味の有る人には詳しく教えてくれるというものであった。

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サイヤヒー氏はとても丁寧で、ペルシア語であったが素晴らしい草木染に関する貴重な資料もいただいた。(読んでいないが・・・)

 このようなことは、これまでの常識では考えられない画期的なことである。というのは本来、染め屋さんの技術というものは門外不出の秘密であり日本においてもどの植物からどの媒染剤を使えばどのような色になるのかというのは決して教えてはいけなかったからである。
        
(実は父方の実家は、2代前まで染め屋だったらしい。)

日本では高崎に住む山崎一家がこの因習を打ち壊し秘伝を公開し『草木染』という言葉を日本で定着させたようであるが・・・。

全ての情報がオープンになりつつあるネット時代の今のさきがけのような 事だが、当時は外の染め屋から大顰蹙をかってしまったようである・・・。

何故、イランでもこのようなことが始まったのか?これには幾つかの理由が有るようだ・・・。
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by caffetribe | 2008-02-28 19:03 | Life is color