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部族の絨毯と布 caffetribe

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部族の絨毯と布

カテゴリ:文様から観えること( 7 )

鳥文様を好む部族として、バルーチ族の絨毯が上げられる。そもそもバルーチと言う意味がクルド語の鶏の鶏冠(トサカ)に由来しているらしい。これはバルーチ研究家で、バルーチ&ブーラフィー語に詳しいM先生から聞いた情報なので、信頼できる。
何故鶏のトサカが語源かというと、戦いの時に被る兜の形がトサカのようだという説があるらしいが、個人的にはバルーチ族の男達が頭に巻くターバンの巻き方がお洒落で、まさに雄のシンボルのような立派な鶏冠に見えるのでは?等と思っている。
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《資料提供 W大学 M先生古い絵葉書より。ブーラフィー族長》
この鶏冠のある鶏のモチーフは絨毯やサドルバックの表皮にも時々表現されるが、オリジナルの古いものは
欧米のコレクターの所有するものとなっていて、現地でも中々入手が難しくなっている。
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J.W.Bauchar Collction Baluch Woven Treasures
ブログでも再三取り上げている本だが、実に素晴らしいコレクションばかりを集めたカタログで、残念だがおそらく二度とこのようなまとまったコレクションは難しいだろうと思われる。いつか日本でもこのコレクションを見ることが出来る日が来ることを願っている・・・・・。
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《上のいくつかの鳥文様はいずれもバルーチ族の絨毯やサドルバック》

また鳥のデザインを巧みにアレンジしてキリムやスマック技法で表現しているのがシャーセバン族である。
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《シャーセバン ヴェルネ ジジム J.Opie TIBAL RUGS より引用》「
バルーチ族の鳥文様が鶏冠のあるに鶏が多いのにたいして、シャーサバン族にの表現する鳥は尾に特徴のある孔雀系の鳥が多いようだ。孔雀はもちろん姿が美しいが、蛇なども攻撃する強気な面も持っていて強さと美しさを併せ持つ事が大好きな遊牧系民族には特に愛されているようだ。またインドなどでも婚礼用の布などに孔雀文様の刺繍などが施されることから御めでたいシンボルでもあるようだ。
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《シャーセバン サドルバックの表皮  J.Opie TIBAL RUGS より引用》
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《シャーセバン ヴェルネ  ジジム J.Opie TIBAL RUGS より引用》
上の通称ヴェルネァと呼ばれる毛織物は、シャーセバンの卓越した文様表現と色彩センスが見事に組み合わされた名作としてあまりにも有名だが、このごろは市場で見かけることはほとんど無いコレクターピースとなっている。
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《シャーセバン バック表皮 パイル 》

このパイルのバック表皮に表現されているのも、鳥のように見える。パイル技法の少ないシャーセバン族のバック類だが、ユニークなモチーフの鳥が可愛らしい。

このように多くの部族に愛される鳥の文様は、無意識の世界を行き来して、直感的なひらめきや予知能力をもたらし、祖霊と繋がる霊的能力や、自由への憧れとして表現されてきたのだろうか・・・。
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by caffetribe | 2009-10-27 23:17 | 文様から観えること
古代から、アーリア人の信仰のひとつに動物の頭や双頭動物または、異形の動物のモチーフなどには、神秘的な力が宿るとされていたようだ。前回紹介した動物や鳥の頭の形の杯や壺など多くの、出土品は何を意味するのか、独断と偏見に満ちた想像ではあるが、人間の生活史(民俗)と重ね合わせて考察してみたい。
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何度も紹介しているルル/バフティヤリー族のサドルバックの表皮に表現されたモチーフだが、J.Opie氏が
注目したのは馬?ライオン?のような動物の背に乗っている双頭の頭を持つ造形である。この双頭の動物モチーフはルリスターンの青銅器からもいくつか出土しており、神秘的な力を持つ造形として興味深い。
また、注目したいのは、メインに表現された動物の尻尾の部分である。この尻尾がいくつかに分かれているのである。
日本でも、3本足の八咫烏(ヤタガラス)や九尾の狐などは妖力があるとされてきた。また、年を重ねた猫で、尻尾が二つに分かれるのを「猫又」として妖怪などに分類している向きもある。鳥(動物)頭モチーフには、動物の持つ神秘的な力を取り込むためにあったのではと思えてくる。サッカーの日本代表のユニフォームにも、八咫烏のマークが着けられていることは良く知られている。
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この八咫烏は神武天皇を導いた霊鳥として信仰を集めているが、世界各地にも三本足のカラスの神話が見られるようだ。同様に北米先住民にもワタリガラスなどカラスを霊力の高い動物として神話に登場させている。
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(*上の二枚の写真はウィキペディアからの引用。)

世界に共通する異形のカラスや動物が何を意味するのかであるが、ワタリガラスなどを含めて予知や地震などの天変地異を知らせる、予知能力を持つことで知られている。

動物や鳥の頭などのモチーフは、未来を「予知」する能力の表現なのではないかと思う。

カラスが何故に神話や特別な存在として語られてきたのか、おそらく人や動物の「死」を予知もしくは真っ先に知る存在ではなかったのだろうか?カラスの鳴き声や騒ぐ声に不吉な感じがするのは、私だけだろうか?
先住民達は、カラスの鳴き声や様子を観察することで、大型動物や身近な人の死を知ることが出来たのかもしれない。鳥や動物の持つ予知能力に特別ななにかを感じていた事は想像できる。
Iranの絨毯研究者Suyus Pharham氏が講演のなかで、『イラン南部の遊牧民達は鳥の飛び方や、鳴き声で雨が降ることを察知することがかつて出来たらしく、鳥の訪れは「雨の恵み」を意味する。』と聞いた記憶がある。日本でも朝ツバメが低く飛ぶと、午後から雨が降るという迷信のような話があるが、不思議と本当になることが多いように思う。今のような気象情報を簡単に知ることが難しかった時代や地域では、動物や植物の様子から天気予報を行ってきたことも想像できる。
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(上から、ハムサ連合・カシュガイ族・バルーチ族の絨毯の部分)

部族絨毯のモチーフには、鳥(動物)の頭モチーフにデザイン化されたモチーフだけでなく、鳥そのものを表現したようなモチーフも多く見られる。
同時にそれが、洗練された文様に変化されてきたことだろう。
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(上から、バフティヤリー族、アフシャール族、クルド族の平織りの毛織物)

鳥や動物文様は同時にとても可愛らしく、心を和ませるモチーフでもあるようだ。
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by caffetribe | 2009-10-21 17:49 | 文様から観えること
10月10日土曜日に、横浜市の日の出町にあるアジアンギャラリーグリーンクラフトさんにて「文様について」のレクチャーを行いました。会場はほど良い広さに丁度いい人数が集まりました。
遠くから、お越し頂いた方々にお礼申し上げます。
準備不足で少しわかりにくい部分もあったと思いますが、熱心な方も多くとても良い雰囲気でした。

はじめは文様の発祥と発達と言うことで、以前このブログでも紹介したネアンデルタール人と現代人の脳の発達の違いを認知考古学的なアプローチで洞窟に残された壁画の紹介などから始めました。
●流動的知性の発達(ラスコー洞窟の芸術的絵画)
  知性の発達の段階 ①社会的知能 ②博物的知能 ③技術的知能とその流動性についてです。
今回のメインテーマは 2.象徴としての文様
 人は何のために文様を象徴化してきたのか?(生きるための知恵の象徴=イメージが文様化された)
私達現人類が困難な氷河期や旱魃を何ゆえに生き延びることが出来たのか?文様に籠められた意味を知ることで、私達が飛躍的に発達した知能の働きを象徴を表すことに求めてみたかったのです。

同時に私達の信仰の対象や宗教の変化に伴い表現される文様はどのように変化してきたのかを知ることも大事だと考えました。
◎信仰の対象としての文様
    時代とともに変化する象徴の対象
    1.動物や自然界に対する畏れや感謝を表す(アニミズム時代)
    2.先祖信仰や呪術師など人やスピリットを象徴とする時代(シャーマニズム的)
    3.一神教や仏教などのいわゆる宗教が生まれ信仰となる時代
絨毯やキリムの文様は、これらの信仰の対象として多様な時代や地域広がりにリンクしたモチーフが見られます。
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例としておよそ2400年前のサカ族(スキタイ)の陵墓から出土した様々な埋葬品、特に絨毯(パジリク絨毯)やフェルトなどに注目し、一神教がユーラシア大陸に広がる以前の時代の貴重な文様世界を紹介しました。
この時代にはすでに完成度の高い職能集団が存在したことを想像させる、技術と芸術性を兼ね備えた美しくまたダイナミックな象徴的モチーフが見られます。絨毯も同様です。
この時代は、動物や鳥などのモチーフも多く使われアニムズムとシャーマニズムが交差する時代であったかもしれません。特に鳥が登場するモチーフは多く見られそれらがなにかを暗示しているかのようにも受け取れます。
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絨毯や布布などのテキスタイルはたんぱく質素材なため、長い時間が経つと風化してしまいますが、土器や青銅器などこの時代の信仰や象徴的造形を表す出土品には鳥を模ったものが多く見られます。
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こららの土器はイランを中心に出土したものですが、鳥や動物の頭がなにかの信仰として力を持っていたかのようです。

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信仰としての文様  ◎イラン高原に栄えた先住民文化(ルリスターン文明からの考察)
動物の頭のモチーフ・・・動物の頭が意味するもの(animal head colum)
以前に度々紹介したJ.Opie氏のトライバルラグに紹介されたキリムや絨毯のモチーフはまさに信仰の対象としての文様のようです。
アナトリア半島のユリュックからトルコ語系~ペルシア語系~アラブ語系に至る多くの遊牧民や騎馬民族のモチーフに共通する「動物の頭のモチーフ」其れが何を意味するのかに迫ってゆきたいと思います。

参考文献:「シルクロードの土と形山内和也著 シルクロード研究書展示会図録より。
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by caffetribe | 2009-10-15 22:56 | 文様から観えること
ホームページをリニューアルしています。
今回のウェブサイトの製作及びデザインはに中国家具が御専門のエスニカさんにお願いいたしました。
ここ一月ほどで色々とアイデアを交換しながらやっとオープンできそうです。

昨年の手仕事プロジェクトがご縁で、5月の手仕事フェスタ=sui=の共同企画などのコラボレーションが続いている横浜エスニカさんとの新しい試みでリニューアル開設記念イベントを行います。

そのキーワードが生命の樹(木)です。
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“生命の樹”は、神話や宗教的シンボルとして世界各地で顕わされ、その存在を確かなものとしてきたようです。
辞書によれば、特定の樹木を生命力の源泉、また豊饒(ほうじょう)・生産の象徴として崇拝する宗教現象。
古代オリエントを中心に、1本の樹木の両側に1頭の動物を描く図像があらわれ、東西に広く伝わった。聖書では、楽園の中央に知恵の樹(善悪を知る樹)と並んで立つ聖樹。
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イラク・ニネヴェ遺跡の石に刻まれたモチーフ。古代オリエント世界に共通する羽根を持つ象徴的イメージは
メソポタミア~ペルシア世界によく見られます。


この“生命の樹”のモチーフも世界中の手仕事のなかに取り入れられて来たことは良く知られています。
絨毯やキリム文様にもたくさんの“生命の樹”が取り込まれています。
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以前にアップしたヘラティ文様で紹介したJ.Ford著の「OrientalCarpets」のなかでも絨毯やキリムの中の“生命の樹”を5つに分類しています。
ただし、これはあくまでも文様としての表現方法からの分類であって、“生命の樹”には歴史的にも宗教的にも精神世界的にも非常に深い意味が込めれらているように思ってきました。

このブログでもいつか取り上げようと思いつつ、思い入れが強すぎて?ここまで来てしまいました。
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世界中の部族の儀礼や神話にも登場する“生命の樹”とは一体何なのか?
おそらく答えは見つかりそうにもありませんが、想像を広げてゆきたいと思っています。
乾燥した地帯に生活する人々にとって“生命の樹”は水のある場所=オアシスをイメージさせてくれるのではないでしょうか?同時にそこには花があり庭となり、鳥や動物達が集まる楽園。そしてそれが永遠に続くような祈りの場所となるのではないでしょうか・・・。

J.Ford氏の分類によれば
1.絵画的なデザインとしての“生命の樹”リアルな木そのものや、デザイン化された象徴としての“生命の樹”
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2.鳥や動物を取り囲む“生命の樹” seneh pictrial rug
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3.祈祷用絨毯の中の“生命の樹” baluch prayer rug
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4.Vase Dsign 花瓶文様としての“生命の樹” besir turkman rug
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5.Garden Design 庭園文様としての“生命の樹” khrasan baluch vase rug
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もちろん“生命の樹”のデザインはこれだけでなく、シンプルなソフレやサドルバックの表皮、バーリシト(枕)などの袋物などにも象徴的デザインとして取り込まれているのです。

特にホラサーンクルド族の細長いソフレなどの中央にひっそりと立つ素朴な“生命の樹”に魅せられます。
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このブログでもまた新しいHPでもこの気になる生命の木を引き続き取り上げてゆきたく思っています。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

                           =お知らせ=


今週金曜日7/31より8/30までの約1ヶ月を利用し、「トライブ ウェブサイト リニューアル記念 合同サマーセール」を開催いたします。今回はこれまでにないびっくりするような価格でお届けいたします。50%OFFも。

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こちらからのキーワード  ・ ・・・・ of Life 前半の部分は、エスニカ公式ブログよりご確認下さい。
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by caffetribe | 2009-07-27 23:07 | 文様から観えること
文様の起源を石器時代までさかのぼり、認知考古学的な角度から人がどうして文様という痕跡を刻んできたのかを考察してみたが、では実際の生活に文様はどんな意味を持ち、また現在に至ったのかを考えてみたい。
ここに奇妙なデザインの絨毯とそれに奇妙に似た青銅(ブロンズ)の道具(呪具)がある。
左:イラン西部ザクロス山脈ルリスターン地域出土女性像、BC7~9世紀。
右:1915年に織られたルル族のバックの表皮(パイル=絨毯)。
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ルル族絨毯の全体。
この不思議なデザインが何を意味するのか?
見れば見るほどこれって何?と考えてしまう。
明らかに鳥と見える形が頭の上についている。これを見て真っ先に思ったのはソッテという朝鮮半島に存在する、柱であった。このソッテは日本の神社鳥居と同様に境界や結界などを表すモノらしい。シャーマニスティックな存在である。

もともとこの地域にあった土着的信仰のなかにシャーマニズム的なものがあったことは、想像できる。
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ルリスターン青銅器BC5~7世紀。動物の頭のついた呪具?
この道具が何に使われたていたのかは、伺い知るしかないのだが杖などの用の道具としてはどう見ても使いづらそうである。なにかの信仰の対象として見たほうが自然な気がする。
個人的には、この動物や鳥の頭は動物としの人が持っていた予知や予感などの第六感的なもの、言い換えれば直感のようなものを、信仰の対象として大切にしてきたのではないかと思えるのである。

これについては、はあくまでも個人的な思い込みかも知れないのですが・・・。
今後も追及して行きたいテーマです。

参考文献 「The Animal Head Design In Lori/Bakhtiyari Weavings」 
       James Opie 著 Hali 別冊 SOUTH PERSIAN TRIBAL WEAVING
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by caffetribe | 2008-06-04 19:48 | 文様から観えること
東西アジア交流の道、シルクロードは文物・人が東西に移動し、そこに様々な思想や技術が交流し多くのドラマが生まれた道なのでしょう。

絨毯といえば、やはり西域のペルシアやチュルク系がその中心で、文様も現在のトルコ・イラン・アフガニスタンなどで生まれ、発達したと考えられています。
ところが中には、東から西へと伝えられた文様世界があります。
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その代表と言えるのが、中国の龍と鳳凰です。
この文様は中世から近世にかけてモンゴル軍の西方への大移動により、ペルシアを中心にアラブ、トルコへ広がったようです。さらにティムール朝時代には明朝との交流が深まったこと、同時に海上貿易も盛んになって大量の陶磁器が中東地域に運ばれたこともその伝播の動きに拍車をかけたようです。

絨毯に表現された文様としては、特に鳳凰と龍のセットが多いようです。
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龍鳳文絨毯 アナトリア 15世紀初期~中期 ベルリン国立博物館イスラム美術館蔵

中国では北の龍。南の鳳凰として、遥か古代から皇帝のシンボルとして北方系の場合は龍が南方系の場合鳳凰がいつしかそれが混ざり合い、愛用されてきた歴史を持っています。
ところがイスラム世界では、ペルシアの伝説に登場する霊鳥シムルグと結びつく鳳凰は善として、龍は悪として帝王の武勇伝では退治されるものとして中国とは変化して表現されているようです。
上の絨毯でも龍と鳳凰は戦っている、闘争図として表現されているようです。

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イランで最も有名な歴史書『シャーナメ=王書』に登場する黒い龍。ロスタムに退治されるのか・・・。
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一方、霊鳥シムルグ(鳳凰)はシャー『王』を守護する存在なのか・・・・?
ラシティドゥジィー刺繍布(イラン北西部カスピ海沿岸の刺繍布)

またチュルク系(トルコ系民族)によるセルジュク.オスマン時代にも僅かだが龍と鳳凰らしき文様の絨毯が織られています。
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16世紀アナトリアラグ VAKIFLAR 絨毯博物館所蔵
この龍が悪者か守護者かを巡っては、大変に興味深い民族的な歴史があるようで、古代から現代に伝わる『龍の起源』と『龍の性格』については、いつかまた考察してみたいです。
どちらかと言えば、アーリア人であるイラン系民族よりモンゴル系にも繋がるトルコ系民族の方が、龍を悪者とせず、寛容に取り入れて来たようです。

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これはモンゴル系絨毯の代表的なバートルと呼ばれている絨毯。
鳳凰と龍ならぬ、鶴と鹿が『龍鳳文』と同じ配置で描かれてます。
とても可愛らしく、身近な存在が微笑ましく大変に気にっている絨毯の一枚です。
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この絨毯に描かれているペアーの鳥獣文の特に鹿が上下で異なって見えることに
お気づきでしょうか?ある方がぜんぜん違って見えると言われました。


最初はあまり気づかなかったのですが、比べて見ていると違いが段々見えて来ました。
後で思い出したのですが、チベットなどでもこの大きさの『カデン』と呼ばれる絨毯は、ラマ(高僧)と信者が相対する時に、高僧に直接信者の息がかからないように、仲介役として使われることもあるらしいです。
そうしてみると、なんだか片方は徳の高い感じがして見えてきます。
そしてその方にはそれが見えていたのかななどと想像しています。

参考文献 絨毯 シルクロードの華 杉村棟著
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by caffetribe | 2008-05-31 17:58 | 文様から観えること
先日、ハウスクエア横浜という住宅展示場において、文様についてのスライド&レクチャーを行った。今回は「部族における文様の意味とは・・・・・。」というものでこれまでにも何度か取り上げてきている。文様について、その起源を人類の脳の進化(淘汰?)と発達(退化?)から掘り下げてみようというものだった。
まずは、人類はいつ頃から象徴的な文様(記号やシンボル)を表現するようになったのだろうか?
● ネアンデルタール人と現人類
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右がネアンデルタール人で左が現人類の頭の断面図である。
ネアンデルタール人は現代人とほぼ変わらない脳の容量を持ち、道具を使い、言葉をしゃべり、動植物の違いを認識し、ある程度の社会性を持っていたにもかかわらず滅んでしまったのか?
その後、生き残って現代にいたった現人類はどこが違っていたのかという事である。
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それは極端に言えば、「心」=無意識の発達に大きな違いがあったのではないだろうか?
これはカイエ・ソバージュ「対象性人類学」のなかで、中沢新一氏が述べている。
『ネアンデルタール人のしゃべっていた言葉には「無意識」がなかった~~~中略~~~~
無意識に支えられていない言葉には詩的なるものは生まれなかった。」
ネアンデルタール人は早生で、生まれたから僅かの間に大人になり、現人類のように自分ではなにも出来ない、いわゆる赤ちゃん時代が短かったようである。
この赤ちゃん時代に私達に特有の「無意識」の構造が発達するらしい。
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上の図は2枚目と3枚目は同じ内容であるが、現人類は流動的知性もしくは認知的流動性という脳の進化?淘汰により文化の爆発的開花が起きたと、「認知考古学」では考えられている。
ネアンデルタール人は現人類と同様に複雑ではないにしろ言葉を発し、道具などを使用する技能的知能をもち、他の個体とやり取りをする「社会的知能」や自然界の動植物を理解する「博物的知能」も備えていたと考えられている。
ところがそれぞれの知能はそれぞれ独立して機能していたようだ。
いまから3万5千年ほど前ころから、現人類は洞窟などに象徴的な壁画や手形などの芸術的表現を行うようになった。芸術の製作を左右する脳の働き、社会・博物・技術という独立した知
能が、継ぎ目なく滑らかに機能したとき創造性が立ち上がり、人に象徴的思考が生まれ記号やシンボルなどのいわゆる文様的世界を創出してきたのかもしれない。
「洞窟へ」心とイメージのアルケオロジー(考古学)で港千尋氏は、多くの先史時代の芸術から現人類の心のとイメージの進化(淘汰)をイメージ、記憶、変身などから人類の思考の可能性と未来へ繋がる新しい扉を開いている。

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最も古い時代の芸術の一つと考えられている、ショーヴェ洞窟のメガセロスいわれる巨大鹿。

わたし達現人類の脳に起こった革命的な組み換え機能により、流動的知性が運動を開始しその様々なイメージ、記号、文様などが生まれ形を変えながら生活の中に広がって来たことだろう。先住民や遊牧民の生活の道具として続いてきたモノのは先史時代の躍動感あふれる原始の息吹のようなものが感じられる。
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イラン西部ザクロス山脈に遊牧するルル族のサドルバックの部分4つに分かれた尻尾に注目

参考文献
カイエ・ソバージュⅤ 対象性人類学 中沢新一著
洞窟へ 心とイメージのアルケオロジー 港千尋著
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by caffetribe | 2008-05-20 14:58 | 文様から観えること