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部族の絨毯と布 caffetribe

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部族の絨毯と布

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このキリムも長さが3メートルを超える、オリジナルサイズのヴェラミンキリムです。前回紹介したガズビンと同様地名のヴェラミンとして知られていますが、これもシャーセバン族の影響が強いキリムといえるでしょう。全体に斜めに連続して繋がる独特な形の文様が実にシャーセバン的です。
これまたなにをモチーフにしているのかは不明ですが、花の様でも,木の様でも、虫の様でもある不思議な造形です。
この連続した模様もさることながら全体でみるとこれは明らかにミフラーブ的様式をしたお祈り用の敷物のように見えます。明らかに一方を向いた祈祷用キリムの形をしています。
イランの遊牧民ではさほど多くありませんが、バルーチ族やタイマニ族そしてアナトリアキリムではセッジャーデとしてあまりにも有名なエルズルムやカジマン、シバスなどのキリムがあります。またミフラブが横長に横長にずらりと並んだsaphなどのモスク用キリムもありますが、これは祈祷用とするとかなり胴長な人3メートルに近い胴長というのは一般人ではありえないような気がします。
ここでまた部族的毛織物の謎にぶつかってしまいます。

さてこの巨人様の祈祷用キリムは何のために織られたのか、それともただの気まぐれのモチーフなのか・・・?





a0051903_2353830.jpg    このように壁にめいっぱい掛けて全体をしげしげと見る機会がなかったため、このような謎にもで合わないで見過ごしてきていましたが、今回は時間もあったのでゆっくりとキリムと対面する時間に恵まれ、久しぶりで色々なことに思いをめぐらすことが出来ました。

良く見るとこのモチーフもボテ(ペーズリー)のようにも見えてきて、なかなか愛らしくなってきます。それにしてもそれぞれの中と周りの色のバランスが見事です。ベースはとても好きなこげ茶色でそれが全体を引き締めているように思いました。

上の写真ではわかりずらいのですが、このボテのようなモチーフにはほとんど目玉のように二つの幾何学的モチーフが埋め込まれています。ところがひとつだけ、この目玉が一つ目もののがありました。これもぼ~っと眺めていた時に突然発見したのですが、わかるでしょうか?

それを発見してから、またさらにこのキリムが興味深いものになってきました。というのはそのひとつの一つ目ボテを中心に、それ以外のボテが渦を巻くように螺旋状の動きをするような錯覚にとらわれたからです。それまでは全体の花畑のようなほんわかとした雰囲気であったのが、急に中心をもつ求心力のある宗教性のある全体像へと変化していったからです。

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このようなことは思い込みやそのときの気分などで左右するのしょうが、以前本で読み大変興味深かった、精神科医フロイトの言った『カシュガイ族のキリムや絨毯にはクライアントの心を解きほぐす何かがある』という言葉が思い起こされます。


見るものの無意識の領域に入り込み、心を乱すことのあるキリムには時にはご用心を・・・。
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by caffetribe | 2006-11-14 23:48 | 展示会あれこれ
a0051903_19582468.jpg相模大野という土地柄か来客数は少なかったですが、個人的にはとても満足の行く展示会でした。
ここ10年来ずう~っと展示してみたいという思いはありましたが、フルサイズのキリムを掛けられる場所が見からず、今回はそういう意味でも自己満足度の高いもでした・・・。

左のキリムはイラン中西部、ガズビン周辺のキリムです。日本でもガズビンキリムのファンはけっこう多くて、雑誌などでも度々取り上げられています。それらは色彩的に茶系統の落ち着いた感じのものが多く、日本のインテリアにとけ込む感じが受けていたのかもしれません。

しかしこのガズビンキリムは、これまでのガズビンのイメージを圧倒する面白さに溢れていました。おそらくガズビンというキリムの産地としてよりも部族としてのシャーセバン族らしさが溢れていると言ったほうが良いかもしれません。

多くの遊牧系部族のオリジナリティ溢れるダイナミックなキリム達が、商業的な臭いのする、こざっぱりとまとまりのあるキリムになりつつあるこのごろですが、欧米でキリムが評価されてからここ30年ほど、そのブームは広がっているのではないでしょうか?特にイランの北西部セネ産やトルコの多くの有名な産地でその傾向が見られるように思います。


a0051903_20221313.jpgこのキリムの細部の文様は実に単純です。図形で最もシンプルな三角形を単純に連続させているだけのシンプルパターンの繰り返しです。ただ三角形の中にところどころに半円形の爪のようなモチーフが見られます。それをひたすら繰り返し色彩の変化で、大きな三つの菱形と半分の菱形、そして最も上にはその菱形の始まりのような図形で終わってます。

この不思議な完成されていない形が、観るものにとってそれぞれに好き勝手な想像力を引き起こすように感じます。

個人的には、光を浴びながら螺旋状に上っていく大きな虹色の龍もしくは蛇なんかを想像してしまいました。小さな三角形のモチーフがどうしても鱗のように見えてしまうからです。

完成していない菱形の部分がその頭のように見えてしまい、一度そう見えるとさらにそのイメージが膨らんでいきました。

世界の先住民の多くが最もシンプルな三角や菱形もモチーフを魔よけ的な意味として使っていますが、台湾の先住民などでも三角や重なり合う菱形は彼らの先祖に関わる毒蛇(百歩蛇)を象徴しているようです。


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この左はサイドボーダーの部分ですが、単純で可愛らしいモチーフが並んでいます。とくに左側の独特の幾何学的文様はシャーセバン族のキリムに時々表れます。
なんとも可愛らしくひとつずつの形が微妙に違うところが楽しいです。

最も右側の茸のようなモチーフもユニークです、なぜか二つづつ色を変えながら上へ上へと繋がっていくモチーフですが、全体のバランスをうまくとっているように思います。

また、このキリムの中で特に好きなのがボーダーの中央にも使われているベビーピンクのようなパステル色です。赤・黄・青・白・黒という原色がふんだんに使われているキリム全体の中でこの柔らかいピンクの色が、全体を中和しているというか、微妙なバランスで全体があまりうるさくしないようにまとめている感じがします。
それがこのキリム全体から虹のような光が溢れてくる印象を与えるのでしょうか・・・?



●くどくどと言葉で書いてしまいましたが、言葉を持たないで来た遊牧民達はきっとこの何千万倍もの豊かなビジョンを持っているのだと思います。
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by caffetribe | 2006-11-13 20:56 | 展示会あれこれ
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大きなサイズ(オリジナルサイズ)のキリム展を相模大野という所で行いました。
今回は地元で家具工房をやられているカーペントリーさと森さんとの共同企画でした。
『シンプルで温かみのある』がコンセプトの里森さんの家具といい雰囲気がだせました。
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11月7日で終了しましたが、この仕事を始めた頃に、日本の住宅事情などをまったく無視してただただ面白さにひかれて購入してしまった、フルサイズのキリムを中心にした展示を行いました。


20年ほど前はバブル時代の真っ盛りで、こちらも気に入れば購入してしまうという浮かれた気分であった事を思い起こす展示会でもありました。


しかし、重なる展示会の疲労からか風邪をこじらせてしまい、途中からまったく声がでなリ、熱も出て、咳が止まらずに、せっかくきていただいた方に満足な説明が出来ず申し訳なく思っています。
しばらく倉庫にしまいっっぱなしで、10年ぶりに広げたようなものもありましたがここ数年ではめっきり見ることの出来なくなったしまった、アフガンやイランの遊牧民のオリジナルキリムの大らかさにはあらためて感動(自己満足?)しました。
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これはアフガニスタンを代表するマイマナ地方の典型的なデザインのキリムです。
技法はスリットのある綴れ織で比較的柔らかい糸でゆったりと織られています。
サイズはヨコ220cmタテ425cmというオリジナルのキリムとしてはかなり大型です。アフガニスタン北西部を代表するキリムや絨毯の集積地であるマイマナに集まってきたウズベク系人々によって織られたものだと思いますが、気持ちが落ち着く暖色系の色彩と幾何学的な文様が見事にマッチした一枚だと思います。
しかし、こんな大きさ日本のどこに敷けるのでしょうか?15年以上持ち続けています。


a0051903_17182169.jpg 左はうえのキリムのボーダーの部分ですが、とても気に入っているモチーフです。
濃い色から、オレンジ、ピンク、ムラサキという茜系の濃淡とそれを引き立たせる黒の濃淡のある組み合わせが気に入っています。そしてそれらをさらに引き立たせる微妙な白の入り合・・・。

よくキリムは色だ!といわれますがアフガニスタン系のきりむはカラフルなアナトリアのキリムと比べて地味な印象を受けます。

しかしよくよくみれば、同系色のなかに微妙な色彩の変化を生かしそれらを補う色や対比する色でアクセントをつけています。とくに左うえに三つの輪を表した白い部分は何かの記号か部族に伝わる暗号のようにも見えてきます。このおきなキリム全体をとおしても白い部分はほんの僅かです。

マフマルバフ監督の撮ったイラン映画『ギャッベ』にも文様にこめられた織り手の特別な象徴としての意味が描かれていましたが、これにも織り手だけがわかる意味が込められているのかもしれません。



体調は最悪でしたが、これまでの展示会の大きな節目となる達成感のある展示が出来ました。
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by caffetribe | 2006-11-12 17:36 | 展示会あれこれ

このところ、バルーチ族の絨毯が集まってきました。イギリスのバルーチコレクターのう友人やマシュハドの修理師サレヒやアフガニスタン人のディーラーから写真や現物で続々とバルーチの面白いものが集まってきました。

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本当に絨毯を扱うビジネスで面白いと思うのは、いいモノが売れたり展示会の企画を思いついたりするとス~ットその部族や地域のや機能のモノが集まってくるのです。

今回もお気に入りのソフレが嫁いだと思ったら、数点の興味深いバルーチラグが届きそうです。


『旅と絨毯とアフガニスタン』のブログでもFさんが度々紹介していますが、バルーチ族の毛織リモノには例えようのない不思議な魅力があるのです。

海外のディーラーやコレクターもかなりのめり込みの激しい人が多いようで、数冊の本が出版されています。





a0051903_21345429.jpgその本や資料の中で最も古く、興味深いものはもう20年以上前にロンドンで行われた二人のディーラーの共同企画の『The Wondering Boluch』ではないでしょうか?

英国におけるトライバル・ラグの草分けといえるカリスマディーラーのDavid・Blackと今でも現役でアフリカやニューギニアなどのTRIBAL ART 全般を扱うClive・Lovelessの二人が収集したバルーチの毛織物はたぶん当時のじゅうたん業界のみならずアートシーンに大きな影響を与えたようです。今では廃盤で,中古でボロボロでも350ドルを下らない図録が残されています。



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その展示の中でも最も高い評価を得たのがこのじゅうたんでした。これは後の出版された部族じゅうたん研究家のJon・Thompson氏の『CARPET MAGIC』でも紹介されていました。

こんなお宝は現地にもうないかもしれませんが、バルーチならあるかも?という想像を掻き立てる神秘性を含んでいるのがバルーチの本当も魅力かもしれません・・・。

この他にもアメリカ人のコレクター故Jeff.Boucher氏がメインにイランのホラサーン地域のバルーチ族の素晴らしいコレクションを集めた『Baluch Woven Treasures』という本と
ドイツ人コレクターのFrank Martin Diehr氏の『Treasured baluch Piecs』という本が出版されている。2冊ともコレクションがが素晴らしいので、近々紹介してみたいと思います。
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by caffetribe | 2006-11-02 21:51 | 部族の絨毯について。
先週は1年ぶりの盛岡での展示会に出かけていました。a0051903_1820967.jpg
そういえばちょうど1年ほどまえからこのブログを始め、盛岡を流れる北上川に上ってくる鮭のことを書いていました。

今年は例年になく、多くの鮭の遡上に出会い、すぐ目の前を大きな体をくゆらせて流れを上っていく姿を見ることが出来ました。
そんな時は展示会の成績もよく、今回は最も気に入っていたアンティークのバルーチソフレが青森のご夫婦の所へ嫁に行きました。

このソフレを手に入れるにには3年かかりました。

最初の年は、マシュハドに住むコレクターと知り合いなんとか彼のコレクション数点を手に入れることができました。
次の年に鍵のかかったコレクションケースの中身を見ることが出来、そこでこのソフレ(婚礼の宴会用と思われる)に出会ったのです。
他もモノとはまったく違うオーラを発するそのソフレは、織りの技術、素材の質、文様の面白さ、コンディションなどどれをとってもピカイチで、とても特別な祝いのために作られたのではないかと直感しました。しかしその時は価格もさることながらこちらに購入するというエネルギーがなくただ見るだけで満足という感じでした。
そして次の旅では、それがもしそこにあるのなら、欲しいという気持ちで出かけ、運良く再会し連れて帰ったのです。
しばらく手元にあったのですが、今回はなぜか展示用のモノをセレクトしている時にこのソフレが、何かを訴えているように表れそしてもっていったのでした。


気に入っていただいた方は、三内丸山遺跡のすぐ近くに住むという物静かなご夫妻です。

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ダブルインターロックの綴れ織・スマック織り・ヨコ糸紋織り・縫い取り織り・もじり織りなど多くの高度な平織り技法を使い、バルーチの伝統的な色彩で、典型的な文様を見事に織り出していました。婚礼用と思われるのは、糸の状態や色彩から相当古いモノと思えるのに、ほとんど傷みのない完璧な状態で、ごくまれに出してきて使用したのではないかと想像出来るからです。(文様と詳しい技法については後で紹介していきたいと思っています。)

遠くイランのホラサーン州のトルバテ=ヘイダリェ辺りからマシュハドを経由して長い旅をしてきたこのキリムは縄文時代のメッカといえる三内丸山の近くに落ち着いたのでしょうか・・・。
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by caffetribe | 2006-11-01 18:42 | 部族の絨毯について。