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部族の絨毯と布 caffetribe

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部族の絨毯と布

文様の起源を石器時代までさかのぼり、認知考古学的な角度から人がどうして文様という痕跡を刻んできたのかを考察してみたが、では実際の生活に文様はどんな意味を持ち、また現在に至ったのかを考えてみたい。
ここに奇妙なデザインの絨毯とそれに奇妙に似た青銅(ブロンズ)の道具(呪具)がある。
左:イラン西部ザクロス山脈ルリスターン地域出土女性像、BC7~9世紀。
右:1915年に織られたルル族のバックの表皮(パイル=絨毯)。
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ルル族絨毯の全体。
この不思議なデザインが何を意味するのか?
見れば見るほどこれって何?と考えてしまう。
明らかに鳥と見える形が頭の上についている。これを見て真っ先に思ったのはソッテという朝鮮半島に存在する、柱であった。このソッテは日本の神社鳥居と同様に境界や結界などを表すモノらしい。シャーマニスティックな存在である。

もともとこの地域にあった土着的信仰のなかにシャーマニズム的なものがあったことは、想像できる。
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ルリスターン青銅器BC5~7世紀。動物の頭のついた呪具?
この道具が何に使われたていたのかは、伺い知るしかないのだが杖などの用の道具としてはどう見ても使いづらそうである。なにかの信仰の対象として見たほうが自然な気がする。
個人的には、この動物や鳥の頭は動物としの人が持っていた予知や予感などの第六感的なもの、言い換えれば直感のようなものを、信仰の対象として大切にしてきたのではないかと思えるのである。

これについては、はあくまでも個人的な思い込みかも知れないのですが・・・。
今後も追及して行きたいテーマです。

参考文献 「The Animal Head Design In Lori/Bakhtiyari Weavings」 
       James Opie 著 Hali 別冊 SOUTH PERSIAN TRIBAL WEAVING
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# by caffetribe | 2008-06-04 19:48 | 文様から観えること
東西アジア交流の道、シルクロードは文物・人が東西に移動し、そこに様々な思想や技術が交流し多くのドラマが生まれた道なのでしょう。

絨毯といえば、やはり西域のペルシアやチュルク系がその中心で、文様も現在のトルコ・イラン・アフガニスタンなどで生まれ、発達したと考えられています。
ところが中には、東から西へと伝えられた文様世界があります。
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その代表と言えるのが、中国の龍と鳳凰です。
この文様は中世から近世にかけてモンゴル軍の西方への大移動により、ペルシアを中心にアラブ、トルコへ広がったようです。さらにティムール朝時代には明朝との交流が深まったこと、同時に海上貿易も盛んになって大量の陶磁器が中東地域に運ばれたこともその伝播の動きに拍車をかけたようです。

絨毯に表現された文様としては、特に鳳凰と龍のセットが多いようです。
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龍鳳文絨毯 アナトリア 15世紀初期~中期 ベルリン国立博物館イスラム美術館蔵

中国では北の龍。南の鳳凰として、遥か古代から皇帝のシンボルとして北方系の場合は龍が南方系の場合鳳凰がいつしかそれが混ざり合い、愛用されてきた歴史を持っています。
ところがイスラム世界では、ペルシアの伝説に登場する霊鳥シムルグと結びつく鳳凰は善として、龍は悪として帝王の武勇伝では退治されるものとして中国とは変化して表現されているようです。
上の絨毯でも龍と鳳凰は戦っている、闘争図として表現されているようです。

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イランで最も有名な歴史書『シャーナメ=王書』に登場する黒い龍。ロスタムに退治されるのか・・・。
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一方、霊鳥シムルグ(鳳凰)はシャー『王』を守護する存在なのか・・・・?
ラシティドゥジィー刺繍布(イラン北西部カスピ海沿岸の刺繍布)

またチュルク系(トルコ系民族)によるセルジュク.オスマン時代にも僅かだが龍と鳳凰らしき文様の絨毯が織られています。
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16世紀アナトリアラグ VAKIFLAR 絨毯博物館所蔵
この龍が悪者か守護者かを巡っては、大変に興味深い民族的な歴史があるようで、古代から現代に伝わる『龍の起源』と『龍の性格』については、いつかまた考察してみたいです。
どちらかと言えば、アーリア人であるイラン系民族よりモンゴル系にも繋がるトルコ系民族の方が、龍を悪者とせず、寛容に取り入れて来たようです。

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これはモンゴル系絨毯の代表的なバートルと呼ばれている絨毯。
鳳凰と龍ならぬ、鶴と鹿が『龍鳳文』と同じ配置で描かれてます。
とても可愛らしく、身近な存在が微笑ましく大変に気にっている絨毯の一枚です。
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この絨毯に描かれているペアーの鳥獣文の特に鹿が上下で異なって見えることに
お気づきでしょうか?ある方がぜんぜん違って見えると言われました。


最初はあまり気づかなかったのですが、比べて見ていると違いが段々見えて来ました。
後で思い出したのですが、チベットなどでもこの大きさの『カデン』と呼ばれる絨毯は、ラマ(高僧)と信者が相対する時に、高僧に直接信者の息がかからないように、仲介役として使われることもあるらしいです。
そうしてみると、なんだか片方は徳の高い感じがして見えてきます。
そしてその方にはそれが見えていたのかななどと想像しています。

参考文献 絨毯 シルクロードの華 杉村棟著
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# by caffetribe | 2008-05-31 17:58 | 文様から観えること
イスラム圏やアジアを旅する楽しみの一つはバザールをひやかすことではないだろうか?
私はバザールが大好きである。
特にイスラム地域のバザールは喧騒、伝統、価格交渉など昔ながらのバザール本来の雰囲気が色濃く残っている。
そんなバザールを集めた本があったことを思い出した。
『The Bazaar』~Markets and Marchant of Islamic World~ Walter M.Weiss著
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この本には西はモロッコのマラケシュからフェズ~カイラワン~カイロ~サナア~ダマスカス~アレッポ~イスタンブール~イスファハン~シラーズ~ドバイ~ヒワ~ブハラ~サマルカンドまでを紹介している。
町の名前を聞いただけで、想像が広がり、行って見たくなる魅力的な場所ばかりである
そしてそこには、数々の歴史を刻んだバザールが存在している。

私はバザールで迷うのが好きである。
最近は仕入れの旅が多いのでそんなに迷ったばかりはいられないのだが、時間が許せば何時間でも迷っていたい。
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Iran Shiraz Bazaar-e-Vakil
この本の中では、『終わりのないキャラバン』としてバザールを
●香・琥珀・金銀・瑠璃(ラピス)などの物々交換のマーケット(市場)としてのバザール。
●モスク・お店・キャラバンサライ(商隊宿)ハマム(公衆浴場)としてのサービス施設としてのバザール。
●絨毯・ガラス・貴金属・帽子・香水の調合・などなどの手工芸品と生活必需品の工房としての機能を持ったバザール。
大きく3つにカテゴライズしている。
そう考えるとバザールとは、地方都市などで盛んに進んでいる総合的商業施設を全部含み
さらに宿泊やその場でオーダーメイドが可能な工場群を備えた、スーパー施設と言えそうだ。

特に好きなのはイランのタブリーズのバザールである。ここの絨毯バザールは歴史・規模・バザール商人の力などどれをとっても最大級である。
そして、なんと言っても迷うのにはもってこいの複雑さである。
毎年欠かさず通っているのだが、必ずといっていいほど迷ってしまうのだ・・・。
迷うに迷って辿りついた店で、とてつもなく面白いものを安く見つけた事も何度かある。
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この場所は確か地下の迷路のようなところを抜けてたどり着き、宇宙人模様のシャーセバンキリムを見つけた店である。
天井は何故かドーム型、たたみ3畳ほど狭い店に何故か、大男が10人ほども屯していて、一瞬たじろいだ。
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肉眼には見えないのだが、狭い穴倉のような空間なので、絨毯を広げたりたたんだりする時のホコリが充満していて、男たちの密度と共に窒息寸前の空気感が忘れられない。

ここでゲットしたモノとは
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前にも何度か紹介しているが、今でのその文様の意味がわからないこのキリムである。
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そしてその後、もう一度この店に行きたいと思い何年も何年もトライしているのだが、未だに辿りつけない。
この迷宮にたどり着くための扉が開かないのである。


参考文献
Walter M.Weiss著 『The Bazaar』
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# by caffetribe | 2008-05-24 18:51
先日、ハウスクエア横浜という住宅展示場において、文様についてのスライド&レクチャーを行った。今回は「部族における文様の意味とは・・・・・。」というものでこれまでにも何度か取り上げてきている。文様について、その起源を人類の脳の進化(淘汰?)と発達(退化?)から掘り下げてみようというものだった。
まずは、人類はいつ頃から象徴的な文様(記号やシンボル)を表現するようになったのだろうか?
● ネアンデルタール人と現人類
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右がネアンデルタール人で左が現人類の頭の断面図である。
ネアンデルタール人は現代人とほぼ変わらない脳の容量を持ち、道具を使い、言葉をしゃべり、動植物の違いを認識し、ある程度の社会性を持っていたにもかかわらず滅んでしまったのか?
その後、生き残って現代にいたった現人類はどこが違っていたのかという事である。
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それは極端に言えば、「心」=無意識の発達に大きな違いがあったのではないだろうか?
これはカイエ・ソバージュ「対象性人類学」のなかで、中沢新一氏が述べている。
『ネアンデルタール人のしゃべっていた言葉には「無意識」がなかった~~~中略~~~~
無意識に支えられていない言葉には詩的なるものは生まれなかった。」
ネアンデルタール人は早生で、生まれたから僅かの間に大人になり、現人類のように自分ではなにも出来ない、いわゆる赤ちゃん時代が短かったようである。
この赤ちゃん時代に私達に特有の「無意識」の構造が発達するらしい。
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上の図は2枚目と3枚目は同じ内容であるが、現人類は流動的知性もしくは認知的流動性という脳の進化?淘汰により文化の爆発的開花が起きたと、「認知考古学」では考えられている。
ネアンデルタール人は現人類と同様に複雑ではないにしろ言葉を発し、道具などを使用する技能的知能をもち、他の個体とやり取りをする「社会的知能」や自然界の動植物を理解する「博物的知能」も備えていたと考えられている。
ところがそれぞれの知能はそれぞれ独立して機能していたようだ。
いまから3万5千年ほど前ころから、現人類は洞窟などに象徴的な壁画や手形などの芸術的表現を行うようになった。芸術の製作を左右する脳の働き、社会・博物・技術という独立した知
能が、継ぎ目なく滑らかに機能したとき創造性が立ち上がり、人に象徴的思考が生まれ記号やシンボルなどのいわゆる文様的世界を創出してきたのかもしれない。
「洞窟へ」心とイメージのアルケオロジー(考古学)で港千尋氏は、多くの先史時代の芸術から現人類の心のとイメージの進化(淘汰)をイメージ、記憶、変身などから人類の思考の可能性と未来へ繋がる新しい扉を開いている。

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最も古い時代の芸術の一つと考えられている、ショーヴェ洞窟のメガセロスいわれる巨大鹿。

わたし達現人類の脳に起こった革命的な組み換え機能により、流動的知性が運動を開始しその様々なイメージ、記号、文様などが生まれ形を変えながら生活の中に広がって来たことだろう。先住民や遊牧民の生活の道具として続いてきたモノのは先史時代の躍動感あふれる原始の息吹のようなものが感じられる。
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イラン西部ザクロス山脈に遊牧するルル族のサドルバックの部分4つに分かれた尻尾に注目

参考文献
カイエ・ソバージュⅤ 対象性人類学 中沢新一著
洞窟へ 心とイメージのアルケオロジー 港千尋著
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# by caffetribe | 2008-05-20 14:58 | 文様から観えること
コンゴの布と一緒にいて、多くのことを教えてもらったように思う。
アフリカと一言で言ってしまうことに対しても、ずいぶん失礼だと思ったし、まだまだ知らない凄い奥深い世界がありそうな事、その表紙をめくったに過ぎないが、本当に魅力的な世界に足を踏み入れそうだ。
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展示中ママドゥ・ドゥンビアさんのコンサートの日を除いては、とても静かだった。
個人的に色々なことが重なり、命とはなんなのだろうか?人間の生と死についてこれまでになく敏感になっていたのかも知れない。会場がお寺だったことが更にその精神的なゆらぎに振動を与えたのかも知れない。
そもそも今回のクバ王国の布は『生を彩る布・死を包む布』として存在しているのだ。
この布たちに囲まれていると、自然に精霊・霊魂・守護神・悪霊などの存在を信じたくなる。
誰も居ない会場に一人居ると、布達が何かを語りかけてくるように感じられた・・・。
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この布たちはクバの部族の人々の『一生の晴れ着=死装束』人生の最後を飾る大切な大切なモノなのだろう。そして死とは新たなる生への始まりなのである。
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アフリカには多くの神話が残されている。
『イラ・サジャブはゴマ族の漁師だった。幼名をカニョンゴといった。ゴマ族の言葉で「やせっぽち」という意味である。彼は別にやせてはいなかったのだが、このようにわざわざつまらない名前をつけるのは、悪魔をごまかすためのまじないなのである。彼らの世界は常に精霊や悪魔、言い換えれば木にも草にも虫にも鳥にも精霊が宿っているのだ。
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また、彼らはリズムにたいしてもとても敏感である。歌うこと、太鼓を叩くことで、周りの草や木の命、虫や動物などの息遣いのリズムに調和してくる。
穏やかで美しく、緩やかに高まり、また低まる。そして植物や鳥達、虫達とのリズムの調和が崩れる時、何かの危険を予知する。
自然の中の予兆だけで、近しい人の死や敵の侵入を感じ取ることが出来るようだ・・・・。
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予定時間を倍ほどオーバーして、コラ、ンゴニ、ギターを演奏してくれた、ママドゥ・ドゥンビアさん、素晴らしい会場を提供してくださった、安養寺さん、そしてクバの布のご縁を頂いた長久手の大山さん、会場に来ていただいた方、これなくても応援頂いた方に感謝します。

<参考文献>
アフリカン・デザイン 渡辺公三・福田明男著
アフリカ研究 梅棹忠夫著
アフリカ的段階について 吉本隆明著
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# by caffetribe | 2008-05-15 18:51 | 展示会あれこれ
今日から、東京都下日野市の安養寺さんという真言宗のお寺で展示会始まりました。
ご住職は、音楽に造形が深く日ごろから無料で、かなり質の高いクラシックやジャズなどの演奏会を無料で開催されています。

今回は以前紹介したコンゴ、クバ王国のラフィア布を中心にナイジェリアの衣装やマリのドロ染めなど、アフリカンムードいっぱいで展示しています。
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魂の落ち着くお寺で、魂の心模様が自由に表現されたクバ王国布は、思った以上にマッチ
して心の無意識の領域に自然に入り込み、日々の硬直した心を解きほぐし、日々の生活で
溜まったもやもやを発散してくれるようです。

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写真:HALI #31より引用

また、会場でアフリカの音楽をかけているのですが、布の文様とリズムがマッチして心地よい雰囲気を作っています。

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会期:5月13日(火)まで 11:00~5:00まで

詳しくは 「部族の絨毯と布」 www.jutanya.com/06info/index.htm
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# by caffetribe | 2008-05-09 20:08 | 展示会あれこれ
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これはウズベク族の手によると思われる、細かいクロスステッチによる小さな袋である。
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そしてこちらは表側の一部である。中央に大きな八角星、そしてその周りを取り囲むように
4方に4つの八角星が丹念に刺繍されている。まさに八角星づくしという小袋である。

この刺繍の小袋のお陰で命拾いしたことがある・・・。また今でも随分お世話になっている。
私にとって、最も大切なものの一つである。そして八角星にこんなに魅せられるのも、この袋が好だから、かもしれない。

中にはお守りとして、お数珠、お守りのフィルゼ(トルコ石)、方位磁石などが入っている。
旅行に行く時の必需品で、これがいないとなんとも落ち着かない。

15年以上も前だろうか?イランのマシャドで大量に古いビーズや天然石の印象などを入手した。中にはササン朝ペルシア時代のシリンダーシール(石のハンコ)などが含まれていた。
その時の帰国ルートは、検査の厳しいテヘランへは避けて、イランのローカルエア(アーセマン)で、ザへダンからクエッタ抜けるパキスタンルートだった。
ただし問題はマシャドとはいえ国際便の出国だ。今こそだいぶ空港は煩くなくなったが、当時のイランの空港には、顎鬚の濃い革命防衛隊がたむろしていて、暇を見つけては、目立つ外国人などにちょっかいを出していた頃である。アンティーク(1000年を越えるもの)は特に持ち出しが厳しく、没収ならまだましで、場合によっては別室にて厳しいお咎め、更には、拘留などといういやなうわさを聞いていた。それこそ見つかれば、古い映画だが「深夜特急=ミッドナイトエクスプレス」の世界である。

やばいものは、体に身に着けるのが一番安全だが、隠し切れない量だし、全身をボディチェックする係官のいるイランではそれも難しく、やむなく幾重にもくるんでX線防止袋にいれて手荷物に・・・。
ところがかえって、このX線防止袋が怪しまれた。係官はにやにやしながら「これは何だ!」
といわんばかりにその袋を開けようとした。
心臓はバクバク、この時ばかりはもうあきらめて天を仰いだ・・・。
ちょうどその時、この大事な八角星の袋がポロリと現れた。

そして中からは、お数珠と方位磁石が・・。
その時一瞬空気が止まったように感じた。
係官は私の顔をじっと見つめ、「ジアラット?(巡礼に来たのか?)」と尋ねた。
私がその時どんな顔をしていたのか、鏡で観てみたいが、おそらくは引きつった笑顔を作って、ただうなずいた。
ラッキーなことに係官のひとりは、通称イランアンハザラといわれるモンゴル系だった。
彼は全てを見透かしたような顔で、「ボロウ!ボロウ!(早く行け)」と言った。

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こうして私は今ここにある。
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# by caffetribe | 2008-05-06 18:27
イラン人の絨毯研究者の一人で、バローチ族を中心とした、『Sistan Carpet』の著者であるALI HASSORI氏の文様の意味の分析によると、この八角星(ハシュト・チャンゴク=八つの角)の意味は『そのデザインの意味の元となるのは一つの結晶=ダイヤモンド=『ルジィ』に由来している。』ペルシア語の『ルジィ』という単語の意味が解らず苦労したが、普通は菱形と言う意味らしい。もう一つダイヤモンド=結晶体という意味もあるようだ。こちらの方が美しいので意訳してみた。
または、小鳥が集まり、頭を寄せ合う形ともとることが出来る』とも有る。これも見方によっては見えなくもない。→もう一つ虫の毒蜘蛛という注釈も出ていた。
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このALI HASSORI氏の分析が必ずしも正しいかどうかは、わからないが、イラン東部のザボル地域を中心とした、いわゆるシスターン地域をくまなく調査バローチ族の織手から聞き込み調査をしてまとめた内容らしい。
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前回紹介した、雪の結晶という個人的な感覚や、星、花、雲、小鳥の集まり、ダイヤモンドなど等その人なりの感性で感じるものなのかもしれないと、あらためて思う。

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上の2枚はおそらくトルクメン族の刺繍に見られる、八角星だが刺繍の技法の違いによって
ずいぶん違った印象を受ける。
個人的には上の白地にサテン刺繍のは雪の結晶かな?下の緑色の刺繍は星かな?
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いや逆かもしれない・・・・。
この上のチェーンステッチは、特徴的なアフガニスタンを代表とするパシュトゥーン族のもの。

a0051903_223529.jpga0051903_2233066.jpgそして、この両側の2枚布は、中国貴州省の  DONG族の織りによる子供の背負子の部分である。





遥かに遠く離れたアンデス、そしてその真裏の中国、~西アジア世界に広がる文様の共通した意味とは・・・。

その共時的な繋がりについていつか触れてみたい。

ちなみにこれが最も大切な八角星モチーフ。
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旅のお守りでもある、お祈り用セットが入った子袋である。
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# by caffetribe | 2008-05-05 22:19
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八角星=8ponted star について『旅と絨毯とアフガニスタン』のFさんのブログで興味深いテキストが載せられていた。とくにバローチ族の絨毯のモチーフにこの八角星を見つけることが出来る。

紹介されていた、J.Boucer氏の数枚のサドルバックの表皮コレクションに表現される八角星はどれも見事で、個人的にも最も好きなバローチ絨毯の一枚である。

この八角星を探してしたら、こんなモチーフが見つかった。
このバローチ族の絨毯に表現されるモチーフから女性が持っているのは、おそらく花だろうしその花の形は八角星のようにも見える。
だからといってこの八角星もモチーフの由来が花であったかどうかはわからない。

この花を持つ人を見ていると、誰か大切な人のために花を手向けているようだ、お見舞いに行く途中でもあるかのように・・・。

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星なのか花なのか、文様には自然現象や見た事のあるもの、知っているものをそのまま形として表現するのが自然だと思う。
同時にその形が、なにか象徴的なシンボルとしても意味を持つ、とも考えられる。

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部族絨毯の文様の意味としては、大きく二つの意味が有るのではないかと思っていた。
ひとつは、部族や民族その社会的環境に伝統的に伝わってきたシンボル=象徴。
遊牧民にとっては、部族のアイデンティティを表現するともいえる形で、トルクメン族のギュルなどがその代表的なものではないかと思う。
伝統的部族の誇り=『スピリット』と言い換えられるかもしれない・・・。
日本の大名や武家社会、その氏族などに伝わった家紋などもその意味合いを持つものと言えるのではないだろうか?
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もうひとつは、生活の中で生きていくための知『センス』が形となって表現されるもの
邪視よけや、鋸歯文様などの魔除け的意味合の強いモチーフである。
James Opie 氏が提唱して依頼、部族絨毯研究のなかで、このところ盛んになっている、動物の頭=アニマルヘッドコラム文様などもそのひとつといえるだろう。
この動物の頭に込められた意味を『雨乞い』などの呪術的意味合いと取ることもできるかも知れない。
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これはカシュガイ族のサドルバックの表皮だが隅のほうに小さく八角星モチーフが見える。
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もちろんこのような分類にはあてはまらないモチーフもたくさん存在するだろうし、今回の八角星もそんなひとつかも知れない・・・。

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もともと文様には、数学の回答のようなひとつの答えなどないのだろうが、どうしても
研究者はそれに意味を求めたがる傾向があるようだ。

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『旅と絨毯とアフガニスタン』でFさんもいっているように、世界各地にあるこの文様について個人が率直に感じたことを、あるがままに言い合えるきっかけになればいいのではと思っている。

個人的にこの八角星を見た時に最初に感じたのは雪の結晶であった。
小さい頃に雪国に住んでいたので、雪は身近な存在であったのだが、小学校で都会に出てきてから、めったに降らない雪に、懐かしさを含めた特別なものとして思いを込めて、観ていたからかも知れない。

その雪の結晶の美しさとはかなさには、思うと胸がキュンとなる時が有る。

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そして、理屈ぬきにこの八角星が好きなのである。

~~~~~~~~~~~~☆~~~~~~~~~~~~~

上から3枚はバローチ族の絨毯とサドルバックの表皮(パイル)
カシュガイ族 サドルバックの表皮(パイル)
シャーセバン族 サドルバック?の表皮(スマック)
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# by caffetribe | 2008-05-02 19:20
シャーサバン族に代表されるスマック織りについての、考察が途中になってしまったが、『織の構造』=woven structuresから見えてくる事に注目したい。

『旅と絨毯とアフガニスタン』のブログで継続的に紹介されている、Peter 氏の『アムダリア川沿いのトルクメン絨毯』のなかでも言及されていたが、織の構造から部族の違いを同定する事が必要になる場合がある、とうテキストがとても興味深かった。

なぜなら、現地で購入した絨毯やキリム、塩入れなどの袋物が何処のどんな人たちによって織られたものかということがとても知りたくなる。そんな場合現地のディーラーに聞いてもわからない場合が多く、欧米で出てる専門書を首っ引きで、似たような色彩やモチーフを探すのだがそれでもわからない場合がある。
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ルル?バックの表皮 表面(交互スマック) 周り縁(パイル)実はこの袋物の表皮も何処の部族かを特定できずにいた。中央の四角と芋虫のようなへんてこな形のモチーフをあまり見たことがなかったからである。
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これは先ほどのバックフェイスのアップである。今はおそらくルル系のバフティヤリー族のものと思っているが、その決め手となった根拠のひとつは、袋物の底の部分にパイル構造(絨毯)が使われていることと、袋の表皮(表面)に交互スマック(Reverse soumack)という技法が使われていることだ。
もちろん表面の文様の意味を確かめることも必要だが、様々な遊牧民族が集結するイラン南西部のザクロス山脈周辺地域は、クルド族・ルル/バフティヤリー族・ラキ族・カシュガーイ族・アフシャール族・ボーヤ アーマド・トルカシャバンド・アラブ系(ハムサ)など等遊牧民のメッカで、文様の比較に頼った分類が難しい。
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ルル族 サドルバック(ホリジン) 表面=交互スマック、底=パイル、袋の留め口=綴れ織り
このサドルバックはルル族を代表するもので、James Opie氏の『TRIBAL RUGS』の中でも
何度も取り上げられている。このサドルバック(ホリジン)の第一の特徴は、とても大きいことである。おそらくロバもしくはラマが担ぐのであろうが、動物がかわいそうになるほど巨大である。険しい山越えなので、ラクダはほとんど用をなさないようである。
幅が1メートル、長さは2メートルにもなり、袋だけでもかなりの重量である。ちなみにこのホリジン(トルコ語でヘイベ)は両脇をほどいて、開口部を繋いで敷物としてよく売られている。
そして、その大きさゆえか、目いっぱい詰められる家財道具の重量に耐えられるように、最も破れやすい、袋の底部分が絨毯(パイル構造)になっているものが殆んどである。もちろん底パイル構造がルル/バフティヤリー族に限られたわけではないが、彼らの袋物の底は小さな塩袋などにおいても、パイル構造が良く見られる。
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    ルル/バフティヤリー族 塩袋 表面=スマック織り 底=パイル
このルル/バフティヤリー族らしいモチーフに溢れる塩袋も、底の部分にはパイルが使われている。
4000メートルを越えるザクロス山脈の峠を越えて、300キロにも渡る過酷な移動をする事でも知られる勇猛果敢なバフティヤリー族にとって、大型の袋ものは必要不可欠である。
そして、その重たい袋物の最も負荷のかかる部分は袋の底であるだろう。

遊牧民にとってはその部分(袋の底)を絨毯=パイル構造にすることは自然なことだったのでないだろうか?様々な毛織物の構造(キリム・スマック・ジジム・ジャジム・紋織りなどなど)のなかでおそらく最も頑丈な構造を持つものはパイル=絨毯だと思う。
絨毯がいつ頃、どんな人々によって織り始められたのか?というトピックは絨毯研究者や絨毯好きにとって純粋な疑問でありこれまでに様々な議論がなされてきた。

もしかして、絨毯=パイルという構造は、袋の底として始まったのだとしたら面白い
かもしれないなどと想像してみると楽しくなる・・・・・。
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# by caffetribe | 2008-04-26 18:56 | 毛織物の技法