一枚の布
さすがに服飾博物館だけあって、実際に布をいかに纏うかということが解りやすく展示してあり、布本来の美しさと同時に、地域や民族・部族のなかでどのように布が大切に使われてきたのかがよく解る、充実した内容の展示会でした。
文化学園服飾博物館 3月14日まで。
この日は、謝恩会だったためか、矢絣に袴姿や着物を着込んだ、卒業生達の姿も見られ、華やいだいい雰囲気が会場に漂っていました。
ただし、目立つのは晴れ着の女性ばかりで、同じく卒業を迎えた男性の姿はほとんどかすんででおりました。
そんな中、特に目を惹いたのが、ミャンマーやインドネシアの男達の衣装です。
この写真の右上の腰巻布(パンソー)ロンジーは知っていましたが、それ以前の時代の男達の華やかな腰巻布は、見事な技法の綴れ織りで、色彩も明るく楽しいモノでした。
右下は、インドネシアスンバ島の絣(イカット)の腰巻布で、正装ではさらに同じような鮮やかで勇壮なモチーフ(龍や馬など)の大判の絣布を肩から巻きつけるようです。
以前にorintlibryさんのブログでも紹介されていた、『男も綺麗、かわいい。』を地で行くような、アジア・アフリカの見事な布の世界を堪能する事が出来ました。
▲もちろんイスラム圏の男達のアジュラク更紗を纏った展示もありました。
写真はパキスタンバロチスタン州、カラート村の男達です
▲纏うにたいして包むの展示はこじんまりしていましたが、感動的なものが多かったです。
なかでもお気に入りは、赤ちゃんを包む、お包み系の布(サンジャン)子供の健康を祈り母親が刺したり、織ったりする包み布は、やっぱり心が暖かくなる何かを感じることが出来ました。
モノクロ写真で見ずらいですが、3点とも赤ちゃんを包み込む布たちです。
一番手前の長細い布(スワッドリング)三角形の細かいパッチワークはまるで蛇の鱗のようでした。
▲この細幅の布を、赤ちゃんの体にきつく巻きつけるのだそうですが、きつく巻く事で赤ちゃんは母体にいた時と同じような、感覚を味わい不安が解消するのだそうです。もちろん布の文様には魔よけ的意味合いの強い▲や尖がったモチーフが多いようです。
この赤ちゃんのための布や揺り籠は、親の愛情とともに部族的な伝統が強く感じられます。
▲やはり、手仕事の原点はここいらにあるのでは・・・。と再認識いたしました。
パキスタンの写真以外は、文化出版『銀花』題144号からの引用です。
これだけの内容なら、図録があれば・・・・。残念。