ラマダンの夜に見た光
まずはパキスタンのファイズ・アリー・ファイズによるイスラム宗教歌謡「カワッーリ」で幕をあけ、続いてはイランの古典的楽器「カマンチェ」の名手カイハン・カルホールとサントゥールの競演が行われた。作曲家としても有名なカルホールならではの独自のアレンジによる即興演奏は、あるときは前衛的、あるときはペルシアの古典音楽を継承するという調和と混沌、静寂と喧騒などペルシア的二元的世界観が交差するスリリングなものでした。
一時間にも亘るパフォーマンス中、幻想的迷宮に引き込まれました。
改めてイラン的世界の奥深さと、精神性の高さに興奮と感動を覚えました。
演奏中はずうっと正座姿勢のまま、ストイックにカマンチェを擁くように音を紡ぐカルホールは、スーフィの修行僧ダルビシュのようでした。
時には弓を手放し、ギターのように直接弦を爪弾く奏法も取り入れるあたり、現代音楽や世界的に知られた東西の音楽家達との交流もあるカルホールならではのものだあるのかもしれまん。
このコンサートのパンフレットにもヨーヨー・マが音楽監督をつとめた、新シルコロードの演奏にも参加していたとありました。
カマンチェという楽器の持つ自在な音色を最大限に生かした演奏方は、聞くものの内面的世界に入り込み、精神の奥底にある泉をあるときは波立たせ、あるときは鎮める響きを持っていたように感じました。
演奏を聞いている間、イランの歴史の奥深さとそれが現代でにも脈々と息づいていることを感じていました。アケメネス朝ペルシアから2500年の時間が演奏の間中、シンクロにティのように
リンクして時には激しく時には静かに、言い古された言葉ですが悠久というものを感じました。
まさに、彼のカマンチェから光が発せられるようでした。
ペルシア音楽には欠かせないサントゥールとのからみが、この演奏の最大の魅力でした。
若手ながらシアマック・アガイエ氏の究極ともいえる演奏と二人の呼吸のよさ、即興のかけひきは、目を閉ると何十人ものオーケストラから発せられる迫力と重厚さでした。
大いなる伝統と洗練、静と動、闇と光、二元的世界に酔いしれた夜でした。
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