Ivory Black & Camel (自然からの贈り物)1.
これら素材そのままの色の毛織物は遊牧民にキリムや絨毯にとってはいがいと数が少ない。
なぜならこの地域の土の色はまさにカーキ色(ペルシア語で土の意味)なので、それらの色がバックの自然に映えないということもあるだろうし、遊牧民や先住民などの人々は根っから派手派手な明るい色を好むという事もありそうだ。
ジョン・トンプソン氏の「Carpet Magic」にもそのあたりが、一般的に教育をあまり受けていない人々は、鈍いくすんだ色よりも、澄んだはっきりとした色を好む傾向があると記されている。
教育を受けていない部分は多少疑問を感じるが、確かそういう傾向はありそうである。
例えばキリム(平織り)の場合は、アフガニスタンのハザラ族に時々この自然色だけで織られたモノを見つけることが出来る。
このハザラ族はほとんど日本人といってもいいようなモンゴル系で、アフガニスタンのなかでは宗教的にもシーア派という少数なことから、常に弾圧やいじめを受けるという事が多いようだが
日本人に近い感性を持っているのではないかという気がする時がある、そのひとつがこの自然色だけを使ったキリムである。
それ以外では、アナトリア東部のトッルもしくはジュルと呼ばれるシャギーのような毛足の長いパイル。(絨毯)これも近年とても少なくなっているようだ。
そしてイランザクロス山脈の山岳遊牧民族のギャッべ。
これは20年ほど前にスイス人絨毯収集家、ジョージ・ボーネット氏により最初の収集がはじまり。これまでのクラシックな絨毯(アラベスク文様)とは対照的なプリミティブなヴィジュアルアートのような感覚が当時のコンテンポラリーアートがもてはやされ始めた欧米で大ブレイクし、現在のギャッベブームに至ったようだが、初期のオリジナル(山岳遊牧民の敷布団用)ギャッベに染めていない羊毛や山羊毛が使われていた。
最近はすっかりZ社製の商業的生産のものばかりになってしまったが・・・。
そしてこのブログでも何度か紹介したアフガニスタンの山岳部族タイマニ族の絨毯にも時々このナチュラルカラーだけを使ったものが観られる。
これはお祈り用のものだが、ラクダの毛、黒白の羊毛だけで織られた素朴なものである。