遊牧民の毛織物の技法(キリム=綴れ織)1
もちろんその当時の毛織物はほとんど風化してしまって発見するのは難しい。
トルコ人のキリム研究家が、来日した時の講演会のスライドで10000年前に織られたという平織りの毛織物の断片を見せてもらったが、どうも本物か疑わしかった・・・。
絨毯ではかの有名な、サカ族の墓から出土したパジリク絨毯(2400年前)があるものの、キリムではそれほど目だった(状態の良い形での)発見はされていないようだ。
むしろ綴れ織という技法では、アンデスなどの南米地域ではなぜか平気で2000年ほど前の綴れ織のマントなどが出土しているが・・・。
ではどうしてこの西アジア~小アジア地域で毛織物がたくさん織られていたことが解るかというと、羊の毛を刈るための道具が多数出土している。この毛を刈るための石器は板状スクレイパーと呼ばれているが、ヨルダン南部などのカア=アブ=トレイハ遺跡などからも多数出土しているようだ。おそらくベトウィンと呼ばれる遊牧民のものであろう。
このあたり(ヨルダンあ~シリア)については【写真でイスラーム】のブログで詳しく見ることが出来る。
また現在のトルコ語と考えられている『キリム』という言葉も、トルコの歴史に詳しいH氏が言うには元々のトルコ語の起源にキリムという言葉は見つからず、イランでよく使われるギリムが語源かも知れないという事であった。
以前紹介したイラクのマーシュアラブの部分でシュメール人が表した粘土版に表記された最古のシュメール語に葦を巻くという動作をギリームとしていたという事があり、おそらく何かの素材を巻きつけて織りものないしは、葦舟や葦の家を作るのに使われたのかもしれない。
という事で、これが最も典型的な綴れ織り、ハツリが入っているもので、欧米などではタピストリーウィービングとばれるのもである
上の部分の技法図。
今後すこしづつ技法についても紹介して行きたく思います。