祈祷用絨毯考―Ⅳ
祭祀の発生をめぐっている。もう一人、まったく同時期に同じく大きいものを貰った相
手がいた。折口信夫だ。西のエリアーデ、東の折口とでもいえばいいだろうか。』
と松岡正剛氏が彼のブログ 『千夜千冊』のなかで述べているように、祈祷用絨毯に
籠められた象徴的モチーフを考える上で東の折口信夫はその本質を知る人かも知
れない。
折口は神が寄り来る装置として『よりしろ』という観念を繰り返しの述べている。
民俗学的フィールドワークの中で、京都の
梵天、花祭りの幣束、節句の幟、盂蘭盆の灯篭などにい至るまでの、その起源を
『よりしろ』に求めている。
祈祷用絨毯に見られるモチーフは実に様々であり、先に紹介したひじょうになまで
に荘厳なTuduc's Coupled-Colum Prayer Rugに見られるような、その民族に
とっての集団的アイデンティティーそのものを表すような完成度の高いものから、
タイマニ族の祈祷用ラグに見られる実にシンプルなものまで幅広い。
この実にシンプルなプレイヤーラグは、Fさんが度々紹介しているエンシ
(テントのドアーラグ)なのか祈祷用絨毯なのかそれともギャベのような敷物なのか
解らないほど、おおらかである。
我々日本人が『よりしろ』としてきたものも実に多様であり、荘厳な祇園の山鉾と
弊束に注連縄という実にシンプルなもに神は表れると信じられてきた。
あるときは樹であり、石であり、紙であり・・・と。
ここで紹介する祈祷用絨毯はほんの一部であり、コーカサスやペルシアの
宮廷用ミフラーブなど実に多様で素晴らしい絨毯が存在している。