部族の毛織物の技法について-1《Woven Structures》
特に驚くべきことはウィーブバランス=タテ糸とヨコ糸の均衡が完璧で、硬くもなくゆるゆるでもなく収まることである。
初心者は特にこのタテ・ヨコ糸のテンション(張り具合)に散々に悩まされる。 特に羊毛のような滑りにくく、手紡ぎまどの不均一な撚り糸を使う場合相当な経験がなければ、パイル(絨毯)と綴れなど違った技法を組み合わせながら、上下左右をゆがみなく織るのは難しい。
これは遊牧民を写した写真の中で最も好きなもののひとつ。おもちゃの織り機で練習(遊ぶ?)トルクメンの子供。 Mr.JON THOMPSON 『Carpet Magic』から
様々な織りの技法が有る中で、これまでに続けて紹介してきた
シャーサヴァン族のスマックという技法を紹介してみたい。
《シャーサヴァン族の得意な織り技法》スマック技法
図のように通常2本のタテ糸にヨコ糸を巻きつけるようにして、一列ずつ端から端まで表現したい柄を色糸を変えながら織り込んでいくという、大変に手の込んだ時間のかかる作業がスマックである。
↑1.プレーンスマック(順目スマック)タテ糸(2本取り)に左から右へとヨコ糸を巻き取りながら一段づつ進む方法。同じ向きに巻きつけて行くため揃ったきっちりした印象をもつ。
特にシャーサバン族のマフラシュやドラゴンスマックと呼ばれる南コーカサス地域によく見られる技法。
←は典型的なスマック技法のマフラシュ(寝具入れの部分)
裏側はまるで絨毯の結び目のようなひとつひとつの糸の絡みが見て取れる。
実は織りの構造については文様や色などと比べ、あまり興味がなく、当然その技法などもほとんどしらなかった。数年前にMarla Malletさんの『Woven Structures』という本に
出会い、何十という遊牧民の織り技法のバリエーションに驚きそれを克明に調べ構造のイラスト共に丹念に調べ上げた 著者の執念ともいえる探究心に驚いた。
2.逆目スマック順目とは逆に一列づつ反対方向に糸を巻きつけていく。揃った感じはな
いが文様に表情がでて立体感が出る。。
イラストはMarla Mallet著『Woven Structures』より
《参考文献》
『woven Structures』 Marla Mallet 著