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部族の絨毯と布 caffetribe

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部族の絨毯と布

ヘラティ文様の系譜2

半年ほど前から準備を始め、先月はほとんどかかりっきりであった手仕事フェスタsui無事に終了しました。
絨毯や布、アンティーク家具好きの出展者と来場者がひとつになれるお祭りのようなイベントができたら・・・。
そんな思いが通じたのかたくさんの手仕事好きな人々との交流が出来ました。
お越しいただいた方、ブログなどを通じて応援して頂いた方々に感謝しています。

アトラクションや様々なレクチャー、オークションの準備などで、出展ブースにほとんどいる時間が無く、来て頂いた絨毯好きの方々とゆっくりとお話が出来なかったのが心残りです。
その後メールなどで、ブログを見ています。という声を聞き怠けていた自分に鞭打って、少しずつつでも続けて
行きたいと今は思っています。 いつまで続くやら・・・・・。

まずは途中だったヘラティ文様の続きから。

ヘラティ文様がアフガニスタンの古代都市ヘラートに由来すること、イラン~アフガニスタンの絨毯文様として普遍的に愛されていることなどを前回に紹介したように思いますが、現在の特にイランではこのヘラティ文様は実に多くの地域の村や部族に愛用されています。

ヘラティ文様の系譜2_a0051903_22505613.jpg

これはイラン西部のクルディスタン地方のビジャーやギャラスなどの村々で盛んに織られる、メダリオンと
ヘラティが組み合わされた最もよく見かけるタイプの文様です。

このように絨毯産地全体に広がったモチーフとしては、以前に紹介したボテ文様(ペーズリー柄)などがありますが、ボテ文様が、絨毯以外のカシミールショールやテルメなどの毛織物、スザニなどの刺繍布など等幅広いテキスタイル全般に用いられるのに対して、ヘラティ文様は主に絨毯(一部のキリム)に使われてきたようです。
ヘラティ文様の系譜2_a0051903_2305418.jpg


20年ほど前は、イランの都市工房で制作されるいわゆるペルシア絨毯を取り扱っていたのですが、その頃に
も現在でもデパートなどでは、最もよく売れる、日本人に愛された絨毯文様もこのヘラティをちりばめた絨毯でした。このタブリーズ周辺で織られる絨毯を業界ではマヒ柄と呼んでしましたが、この由来は中央部分のひし形モチーフの周りを囲む4っつ(匹)の魚=ペルシア語のマヒにあるのです。
この四方を取り過去む特徴的モチーフがはたして魚(マヒ)なのかそれともアラベスク文様の先端にも表現される植物文様(尖った葉)なのかは、人それぞれ様々な意見がある様です。
ヘラティ文様の系譜2_a0051903_23115131.jpg


また、おそらくかなり前から存在するヘラティ文様が徐々に洗練され、完成されて行くのは、18世紀~19世紀初頭にかけて、イラン東北地方のホラサーン地方のムードやビルジャンド、カインなど村々の絨毯生産がその鍵を握っているようです。
2007年に行われたICOC(国際絨毯会議)の研究発表にも、ペルシア絨毯最盛期のサファビ朝の後、絨毯産業を支えたのは、優れたヘラティモチーフをさらに磨きあげたホラサーン周辺の村々の技術とデザインセンスが欠かせなかったという報告がありました。
ヘラティ文様の系譜2_a0051903_23212978.jpg


この発表を行ったのは、レバノンに住む大絨毯商マクタビ一族の御曹司、ハジ・マクタビ氏によるもので彼は
絨毯研究者のなかでも、オックスフォード大学で絨毯学の講座を持つJon Thompson氏の愛弟子でもあるようで、Jon Thompson氏自らがチェアを勤める、『イランに於ける絨毯学』コースの中で行われました。
いかにも長けた中近東のお金持ち御曹司風のハジ・マクタビ氏はまさしく、絨毯業界のエリートという匂いがしていました。会議のあとで、アスタラバザールの老舗の絨毯ショップで偶然にThompson氏と一緒のマクタビ親子に再開しましたが、いかにも彼のスポンサーという感じがしました。(これはやっかみでしょうか^^。)
おっと、話がそれました。

大昔に生まれ、200年ほど前に全盛期を迎えたヘラティ文様は、同じ地域の部族達にも愛用されています。
この文様をどちらが先に織り始めたかは、いつかまた調べたいですが個人的に好きなバルーチ族はヘラティ文様を実にうまくアレンジして織り込んでいることは良く知られています。

ヘラティ文様の系譜2_a0051903_2335344.jpg


この絨毯は今年の3月の仕入れで入手したものですが、大変に完成度の高いヘラティ文様が実に緻密に
織り込まれています。そのノット数はペルシア絨毯のイスファハンかテケの19世紀初頭のものかと思うほど
100年は経っていると思われますが、状態もよくフリンジ部分のキリムエンドも残っています。
ちなみにこの絨毯のひし形を囲むモチーフが魚だとすれば頭が二つあるようにも見えます。
体がギザギザなのをカスピ海に住むチョウザメに喩える人もいるのですが・・・?
そういわれると・・・・。なんとなくそれらしく・・・。

ヘラティ文様の系譜2_a0051903_23383092.jpg


こちらも同じくホラサーン地方のバルーチ族のものですが、こちらは頭がひとつなのでなんとなく魚にも見えそうですが。やはり尖った葉っぱのほうがそれらしくもありますね。
さて、皆さんはどちらに見えるのでしょうか・・・?
by caffetribe | 2009-06-03 23:44 | ヘラティ文様

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