鳥(動物)の頭のモチーフの意味2.
何度も紹介しているルル/バフティヤリー族のサドルバックの表皮に表現されたモチーフだが、J.Opie氏が
注目したのは馬?ライオン?のような動物の背に乗っている双頭の頭を持つ造形である。この双頭の動物モチーフはルリスターンの青銅器からもいくつか出土しており、神秘的な力を持つ造形として興味深い。
また、注目したいのは、メインに表現された動物の尻尾の部分である。この尻尾がいくつかに分かれているのである。
日本でも、3本足の八咫烏(ヤタガラス)や九尾の狐などは妖力があるとされてきた。また、年を重ねた猫で、尻尾が二つに分かれるのを「猫又」として妖怪などに分類している向きもある。鳥(動物)頭モチーフには、動物の持つ神秘的な力を取り込むためにあったのではと思えてくる。サッカーの日本代表のユニフォームにも、八咫烏のマークが着けられていることは良く知られている。
この八咫烏は神武天皇を導いた霊鳥として信仰を集めているが、世界各地にも三本足のカラスの神話が見られるようだ。同様に北米先住民にもワタリガラスなどカラスを霊力の高い動物として神話に登場させている。
(*上の二枚の写真はウィキペディアからの引用。)
世界に共通する異形のカラスや動物が何を意味するのかであるが、ワタリガラスなどを含めて予知や地震などの天変地異を知らせる、予知能力を持つことで知られている。
動物や鳥の頭などのモチーフは、未来を「予知」する能力の表現なのではないかと思う。
カラスが何故に神話や特別な存在として語られてきたのか、おそらく人や動物の「死」を予知もしくは真っ先に知る存在ではなかったのだろうか?カラスの鳴き声や騒ぐ声に不吉な感じがするのは、私だけだろうか?
先住民達は、カラスの鳴き声や様子を観察することで、大型動物や身近な人の死を知ることが出来たのかもしれない。鳥や動物の持つ予知能力に特別ななにかを感じていた事は想像できる。
Iranの絨毯研究者Suyus Pharham氏が講演のなかで、『イラン南部の遊牧民達は鳥の飛び方や、鳴き声で雨が降ることを察知することがかつて出来たらしく、鳥の訪れは「雨の恵み」を意味する。』と聞いた記憶がある。日本でも朝ツバメが低く飛ぶと、午後から雨が降るという迷信のような話があるが、不思議と本当になることが多いように思う。今のような気象情報を簡単に知ることが難しかった時代や地域では、動物や植物の様子から天気予報を行ってきたことも想像できる。
(上から、ハムサ連合・カシュガイ族・バルーチ族の絨毯の部分)
部族絨毯のモチーフには、鳥(動物)の頭モチーフにデザイン化されたモチーフだけでなく、鳥そのものを表現したようなモチーフも多く見られる。
同時にそれが、洗練された文様に変化されてきたことだろう。
(上から、バフティヤリー族、アフシャール族、クルド族の平織りの毛織物)
鳥や動物文様は同時にとても可愛らしく、心を和ませるモチーフでもあるようだ。